元・陸上幹部自衛官の13年間の奮闘記

ダメダメ大学生だった元陸上自衛官の13年間の自衛隊での経験や教訓を共有するブログ

【元・陸上自衛官が語る】陸上自衛隊の語学教育(米国国防総省語学学校の情報含む。) 〜僕が入校した小平学校幹部普通英語(POE)課程〜

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こんばんは。

元・国防男子の大吉です。

 

今日は、陸上自衛隊の語学教育についての記事を書きたいと思います。

陸上自衛官でも一部の人しか知らない英語課程に関する情報も記載してみましたので、これから英語を使って仕事をしたいと思っている人は必見です!

幹部自衛官だけでなく、陸曹自衛官にも役立つ情報ですよ!

きっとあなたの将来の仕事の幅が増えるはずです。

 

 

陸上自衛隊には語学学校があり、

無料で、給料を貰いながら集中的に語学教育を受けることができるんです。

もちろん、将来の任務に備えるため。

 

すごく魅力的ですよね?

 

僕も幹部普通英語課程に入校させてもらい、日々の業務から離れて約5ヶ月間も英語を集中して勉強させていただきました。

 

  

悲願の幹部普通英語課程(POE)への入校!

僕がまだ、第1空挺団に所属しているときのこと。

前回までの検閲訓練も終えて、次の定期異動のとき、

待ちに待った幹部自衛官の部隊への補充があった。

 

中隊長からは、

『大吉、POEの入校案内が来てるけど、どうする?』と。

 

「是非、行きたいです!」

 

『これまで一人で頑張ってきたから、希望だったPOEに入校させてやる。』

『行って来い!』

 

と言っていただいて、

部隊の多忙な業務から5ヶ月間も離れて、

英語漬けの日々を送ることができた。

 

本当にラッキーだった。

 

上司に反対をされて入校させてもらえない隊員も沢山いる。

部隊から幹部が一人いなくなれば、

その分の業務は誰かが肩代わりしなければならない。

だから、業務がきつくなってもその幹部の将来を考えて、入校を許可してくれる理解のある上司でなければ、そのチャンスを掴むことができない

もちろん、部隊に幹部が不足していて、

どうしても入校させることができない部隊もあるため、その場合は仕方ないのだが・・

 

実は、将来的に英語を使用した仕事を希望する幹部や、将軍になるための登竜門である指揮幕僚課程(CGS)に入校するためには、英語はとても重要。

よって、特に英語が苦手な人にとっては、この入校が出来るかどうかは、将来の自分の進路にとても重要なものとなる

(忙しい業務の中で、自分でしっかりと時間を確保して軍事英語を勉強できる人は問題ないが。)

 

英語課程に入校するメリットは、

① 英語を集中的に学ぶ時間が確保でき、小平学校が長年培ったノウハウにより効率的に軍事英語を学ぶことができる。

② 無料で英語学習やTOEICの受験ができる。

③ 英語を使用しての指揮等、実践を通じて学習ができる。

④ 指揮幕僚課程(CGS)の受験時に必要となるTOEIC(L&R)の点数を上げるための勉強をすることができるため、受験に有利に働く。

⑤ 入校中の同期ができ、その関係は将来的にどこかで役立つ。

⑥ 海外留学、防衛駐在武官、連絡官、PKO等の海外で勤務できるチャンスが掴みやすくなる。

⑦ 将来の職域の幅を広げることができる。

など。

ざっと思いつくだけでもこれだけあります。

もちろん、継続して学習しなければチャンスを逃してしまうこともあります。

 

陸上自衛隊では、英語ができるとかなり重宝されるため、

(というか、幹部は英語ができて当たり前で仕事では必ず使用する時が来る。)

自分の将来の道に必ずプラスに働く

 

だから、

たとえ部隊の業務の関係で英語課程に入校できなくても、腐ることなく、

英語は継続的に勉強を続けていくべき科目だ。

 

習志野駐屯地から小平駐屯地へ

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(出典:陸上自衛隊公式HPより引用)

普通英語課程への入校が認められて、

千葉県の習志野駐屯地から東京都小平市の小平駐屯地へ引っ越しすることになった。

 

これから、約5ヶ月の小平での生活がスタートする。

 

陸上自衛隊一激しい部隊から、

主に自衛隊の学校(人事、会計、警務、システム、情報、語学)が集まる閑静な小平駐屯地へ。

隣に警察機動隊の学校があるため、たまにうるさいが小平駐屯地内はとても静かで、平和 (^o^)

 

平和な5ヶ月のスタート!

降下や行軍等の厳しい訓練もなし!

部隊での多忙な訓練計画の作成等の業務からも開放される!

教育は17時30分には終了するので、それ以降は自由!

毎日の帰宅が2100過ぎだった僕にとっては、自分のことだけに集中できる最高の期間だった。  

小平学校のその他の語学課程

ちなみに、小平学校の語学課程には、

英語教育の他に、

ロシア語】【中国語】【朝鮮語

の課程がある。

海上自衛隊航空自衛隊には上記の3つの課程がないため、海・空自衛官や事務官も教育に参加する。

1年間の課程教育で、「情報」要員やそれらを母国語とする国で勤務する駐在武官要員などが参加する。

卒業後に、そのまま小平学校の語学教官になる人もいる。

 

上記の課程は結構きついと思う。

1年間もずーっと語学の勉強だけなので、成績が伸び悩むとストレスも溜まるでしょう。

毎日深夜0時頃まで教場の明かりが点いていました

 

僕がPOE入校中に、ロシア語課程の学生が自ら命を絶った事案もあった。

 

でも、それらの語学が得意な人や将来そちらの方面で働きたい人は是非希望するといいでしょう。

幹部普通英語課程の入校・卒業基準

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幹部普通英語課程では、一般英語軍事英語を学ぶ。

クラスは、ABCクラスの3クラスあって、

それぞれの素養(TOEICの点数)によってクラス分けされる。

 

入校の要件は、

TOEIC(L&R)で350点以上

 

当時の卒業基準は、

TOEIC(L&R)で500点を取得すること(当時)。

現在は600点。)

 

ちなみに、

規則で定められた各課程の教育開始時の能力→教育終了時の能力は以下の通り。

【英語通訳集合訓練】 800→860

【幹部上級英語(AOE)】600→730

【幹部普通英語(POE)】350→600

【陸曹上級課程(AEE)】470→600

【陸曹普通課程(PEE)】270→400

 

 

僕は、大学時代では第1外国語で中国語を学習していたので、

大学4年間は英語の授業はほとんど受けていなかった。

本格的に英語を勉強するのは、大学受験以来。

 

部隊にいるときには、英語を使用する業務がなかったし、当時は英語の重要性もよくわかっていなかったため、一切英語の勉強はしていなかった。

 

が、運良く、入校時の素養テスト(TOEIC)で500点以上取得できていたので、教育間は気持ち的に楽だった。

 

でも、今回の入校の目的は、『軍事英語』を学習すること

「敬礼!」や「回れー、右!」などの軍隊の号令をはじめ、

米陸軍の教範に基づいた学習をする。

 

これまで、軍事英語は勉強したことがなかったので、僕をはじめ、入校者のほとんどが軍事英語初学者。

幹部候補生学校でも少し軍事英語は勉強する。)

 

入校者の中には、素養試験の点数が250点という隊員もいた。

入校要件がTOEICで350点以上だったのだが、

この学生はこの教育が終了したら、在外公館警備対策官としての勤務が予定されていたため、要件は満たしていないが入校したらしい。

 5ヶ月後の卒業時には、ギリギリで500点を取得できたが、かなり苦労をしていた。

 

最終的に僕たちのクラスは、 

クラス全体のTOEIC(L&R)の平均点が、250点くらい伸びた。

(当時は歴代最高の伸び)

一番伸びた人は、確か300点以上は伸びたかな〜。

伸び代にもよるが入校して真面目に取り組めば、TOEICの点数はそれくらい上がる。

軍事英語も何とか喋れるくらいにはなる。

だから、この教育に参加できるかどうかは、自分の将来にとってはとても重要なのだ。

(もともと、英語ができる人は問題ないが。)

 

小平学校では、どんな入校生活をするの?

日常生活

語学学校なので、朝から晩まで英語漬け

居住隊舎から教場までは、英語で号令をかけて部隊で移動する。

 

毎朝、『間稽古(まげいこ)』といって、

前日に出された10文くらいの文章を暗記して、

教官を含むグループで発音等を練習する。

明らかに覚えていなければ、こっぴどく怒られる。

 

教官室に入るときも、入室から指導受け、退室まで英語で実施する。

発音が悪かったり、間違うと指導してもらえる。

 

英語の授業は、部外からの外国人と日本人の講師がいて、

一般英語』を学習する。

軍事英語』は、基本的に小平学校所属の

陸上自衛官か事務官が担当する。

 

授業が終わったら、英語で日記等の課題が沢山出される

そして、文章の暗記。これが地味にきつい。

 

ほとんどの学生は夕食及び入浴後、教場に戻って夜遅くまで勉強をしている。

 

僕は、ずーっと英語という環境が嫌になり、

毎晩のように外出して気分転換をしていた。

 

週に1日は、気分転換のために体育の授業が行われ、体育係が計画した科目で汗を流す。

 

このような生活が約5ヶ月続いた。

 

入校当初は、新しい同期との出会いやこれまでとは異なった環境で自分の勉強だけできることをすごく幸せに思った。

 

しかし、毎日がとても単調な生活

英語だけの勉強で、課業中は日本語の使用は禁止。

 

このため、2週間で拒否反応・・・

「あぁ、退屈だ。早く部隊に帰りたい・・・」

となってしまった。

 

空挺団での勤務があまりにも激動で、刺激がたっぷりあった分、

英語だけ勉強するという単調な生活に耐えれなくなったのだ。

 

だから、毎日のように、課業が終わると外出をして駐屯地外の空気を吸っていた。

在日米陸軍人との交流

教育間、キャンプ座間の在日米陸軍から准尉から大尉までの階級の軍人が3名、

小平学校に来て2週間程交流する。

 

この間、

小平市にある歴史館をグループごとに英語で説明したり、通訳の練習をしたり、米陸軍に関するプレゼンをしてもらったりする。

 

そして、その米軍人が参加している期間は、課業終了後、グループ毎に日本文化を紹介するために米軍人を誘って外出する。

これがこの教育期間で一番楽しかったこと!

実際に米軍人とざっくばらんな話ができる良い機会だったから。

 

僕たちのグループは、C大尉に日本文化を紹介することになった。

C大尉は男性で、職種は通信科で趣味はサッカーだった。

 

電車に乗って、まずは立川市にあるお好み焼き屋に連れて行った。

その後、彼の希望でキャバクラに2件行った。

かなりの女性好きだったので、結構楽しんでいた。

 

次の日。 

教官室の前を通ると、英語の女性の教官とC大尉が

昨日の日本文化の紹介についての会話をしているのが聞こえた。

 

女性の教官から、

「C大尉、昨日はどこに連れて行ってもらったの?」

カマクラ』

「えっ、鎌倉まで行ったの?遠かったでしょ?」

って会話を耳にして、

 

「あっ、ヤバイっ」って思ったけど、

キャバクラに連れて行ったことが何とかバレなくてよかった・・・。

いい思い出です。

 

それから5年後

僕が在日米陸軍司令部で勤務していたときに、

C大尉は在日米陸軍の通信中隊の中隊長として勤務していた。

階級も1つ上がって、少佐になっていた。

5年以上経ったけど、

また一緒に勤務することになるとは

当時は思いもしなかった。

横田基地の奥様との英会話

小平駐屯地に比較的近いところに米軍の横田基地がある。

そこの奥様達とグループ毎に毎週会話実習がある。

それぞれのグループで担当の奥様は決まっていて、中には目のやり場に困る服装で参加される奥様もいる(^^)

 

毎週会話のお題が決まっていて、

それについて、まず英語でプレゼンをして、

同期や奥様からの質問に答えるというもの。

これは準備が大変だったけど、とても勉強になった。

 

ハロウィンやクリスマス等のイベントのときには、

アメリカのあま〜いお菓子やケーキを作って持ってきてくれた。

そして、教育終了直前には家に招待していただき、ご馳走を振るまってくれて、

横田基地のオフィサーズ・クラブでお酒を飲んだりもした。

隊歌コンクール

なんと、小平学校では隊歌コンクールというものがあり、コンクールの1ヶ月前くらいから、

間稽古が英会話から隊歌合唱に変わる(^^)

このコンクールには小平学校の他の教育課程の学生も参加し、それぞれの課程対抗の合唱コンクール

「何で英語の勉強をしにきているのに、なんで歌なんか歌わないといけないんだ?」

学生の誰もがそう思っていた。

 

しかし、教官曰く、

『合唱することで英語の発音が良くなるから。』

 

「・・・・・・・。」

 

僕たちの課程は、

小平学校校歌』と『抜刀隊

を合唱することになった。

 

隊歌係」という変な係が臨時的に決められ、その係の学生の指導のもとに、コンクールに望む。

もちろん、隊歌係といっても歌は素人です。

 

毎朝、小平学校校歌と抜刀隊を大声で歌った。

入校中はあまり大声で歌うことも無かったので、声の通りは良くなった?かも。

 

合唱コンクールの結果は、3位。

全部で15チームくらいいたかな?

 

個人的にはどうでもいいコンクールだったのであまり覚えていません。^^;

チャンスは突然やってくる!

僕は入校当初の素養試験の結果が良かったので、Aクラスで授業を受けていた。

しかし、毎晩外出していたこともあって、成績の伸びはそれほど良くなかった。

教育中盤くらいにはクラスを一つ下げてBクラスになり、そのまま卒業した。

 

当時の教官がよく言われていた言葉が、

たとえ、POEでCクラスであっても、これから必ず英語を使って勤務したり、海外で勤務する可能性があるから、英語は継続的に勉強しておくように!

当時は、話半分に聞いていた

 

僕は英語はそれほど得意でなく、英語に対する情熱も高くなかったので、

POE卒業後も

「この成績じゃ、今後英語を使う仕事はないな」

と勝手に思い込んで、英語の勉強からしばらく離れてしまっていた

教官の忠告を無視して。

 

それから、約2年後・・・

指揮幕僚課程合格後に、

突如、米国陸軍への留学の話が!

 

「なに〜!?こんな美味しい話があるのか?」

「えっ!?試験もあって、試験で82%を取得しないと行けないの?」

 

留学前に米国国務省の語学試験があったので、また英語の勉強を再開。

 

留学から帰国後、すぐに指揮幕僚課程に入校して、卒業後に、在日米陸軍司令部勤務。

その後は、国連の兵站課程を受講するためにマレーシアの国連平和維持活動センターに短期留学し、

南スーダンPKOへ個人派遣で1年間参加することになった。

 

POEに入校しているときは、

これほどまで英語を使う仕事に携わることになるとは全くもって思っていなかった

でも、何とかチャンスをものにでき、英語のお蔭で海外で勤務する機会を得ることができ、普通の人ではできない沢山の貴重な経験をさせていただいた。

そんなこんなで5ヶ月間の教育は修了

そして、5ヶ月におよぶ教育も無事終了し、晴れて空挺団に帰れることになった。

やっと英語地獄から解放された。

もう、毎日英文を覚えなくていい!

日本語で会話できる!

 

大学時代に中国語を勉強していたこともあり、中国語課程で勉強してみたいと思っていたが、もうこの単調な生活には耐えられないと思って諦めた。

性格的に合わないんだろうなと。

 

英語課程終了後の空挺団長への申告と感想は、英語で。

 

卒業後は部隊の業務をやりつつ、当面の目標である、

陸上自衛隊幹部学校の指揮幕僚課程試験合格を目指して勉強を頑張りました。

最後に

僕が受けた当時の幹部普通英語課程はそんな感じでした。

英語がある程度できる人にとっては、気楽に教育を受けることができますが、

英語が苦手でTOEICの点数が低い人はかなり苦労するかもしれません。

 

英語がかなりデキる人は、

その上の『幹部上級英語(AOE)』に入校するといいでしょう。

これは、通訳要員を育成するための教育で、卒業するとMOS(特技)がつくので、日米共同訓練などの通訳が必要な場面で重宝されます。

 

さらに上を目指す人は、『英語通訳集合教育』。

英語能力を伸ばしたい人は、是非『AOE』や『通訳集合教育』にチャレンジしてみてください。

課題も沢山出されてキツイですが、英語力はかなり付くと思います。

 

この他、英語を極めたいという人は、

米国国防総省語学学校(テキサス州ラックランド空軍基地)の「教官課程」(BALIC:Basic American Language Instructor CourseとAELIC:Advanced American Language Instructor Course)入校もあります。

教官として英語で教育するためのノウハウを学ぶことができます。

よって、小平学校の英語教官はこれらの課程に入校できるチャンスがあります。

そして、英語が得意であれば教官以外でも、陸曹でも入校が可能です

 

ちなみに、米国軍の教育課程へ留学する人は全員(陸曹も含めて)、約2ヶ月間、ここで軍事英語の勉強をして本課程に進みます。

 

ここの施設での教育環境は最高です!!

帰国したくなくなります!!

 

詳しくは、↓ ↓ ↓ ↓

米国国防総省語学学校HP:http://www.dlielc.edu/index.php

 

そして、TOEIC(L&R)対策でおすすめの教材は、 ↓ ↓ ↓ ↓

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公式 TOEIC Listening & Reading 問題集 1

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TOEIC(L&R)をまだあまり受けたことのない人、600点未満の人には、『TOEICテスト直前の技術』はオススメです。(小平学校でも推奨され、この本に基づいてTOEIC対策をしてくれます。)

パート別の対策や対策順序も記載されていますので、効率的に得点を上げたい人はこれを使ったほうが良いでしょう。

 

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

今日も皆様にとって良い一日となりますように!

元国防男子 大吉

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