【現役自衛官の転職希望者必見!!】元陸自幹部自衛官の転職活動記 〜家庭崩壊危機による自衛隊退職決意から転職成功まで〜
おはようございます。
元・国防男子の大吉です。
ご無沙汰しております。
家業の方も何とか落ち着いたので、数ヶ月前から本格的に民間企業への転職活動をしていました。
そして、自分のこれまでの知識や経験が一番活かせそうなベストな就職先が決まりました。
そのため、
に役立ちそうな記事を書きたいと思います。
任期制の隊員や定年退職者は、各駐屯地の援護室で再就職先の斡旋をしてもらえます。が、僕のように自分の意志で退職する場合はそのような斡旋を受けることが困難だと思いますので、僕(元3等陸佐)の転職活動経験を共有したいと思います。
あくまで僕自身が民間企業への転職活動を経験して実践したことや感じたことなので、参考にできるところだけ参考にして、これからのあなたの選択に役立てていただければ幸いです。
- 退職を決意したその他の理由
- いざ、崖から飛び降りるとなると・・・
- 僕の退職後の状況
- ぼちぼち転職活動をスタート!
- 転職サイトへの登録と転職の壁
- そうだ!転職のプロに話を聞こう!
- ある日届いた運命のスカウトメール
- 最初の難関、書類選考
- 30代後半にして人生初!民間企業での面接
- 誤解しないでほしいこと
- まとめ
退職を決意したその他の理由
過去の記事を読んでいただいた方はわかるかもしれませんが、僕は13年間陸上自衛隊で務めて退職しました。
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前の記事では書かなかったですが、実は退職理由は他にもあったのです。
①激務に耐えることが美徳??
幹部学校の教育では、防衛省本省で勤務する先輩方から、統合幕僚監部や陸上幕僚監部等でどのような勤務をしているかについて講話を受ける機会がある。
そして、幹部学校の教官も防衛省本省での勤務経験者ばかりなので、授業の中で本省での勤務状況について話していただくことがあった。
その中で、防衛省本省経験者は想像を絶するくらいの激務を経験していることを知る。
- 俺は、月曜の朝出勤して金曜の夜に帰宅する生活を3年間続けた。その結果家庭が崩壊した。
- 上司が毎日朝の6時に出勤するから、それより前に出勤しないといけない。始発では間に合わないので、いつも職場に泊まっている。
- 帰れない日はいつも事務所の床の上か机に伏せて寝ている。
- 3佐クラスは上司へのお茶汲み、ゴミ捨て係。自分の仕事は雑用が終わった夕方から始まる。だから、なかなか終電までに帰れない。
講話に来ていただいている人に共通して言えることは、上記のようなことを自慢げに話し『美談化』する。
うつ病になって離脱したり自殺する人もいるのに、この環境に耐えることが『美徳』?
本省勤務なので、多忙であるのは仕方ないと思う。
が、なぜ、このおかしな状況を変えようという声が出ないのかが当時の僕にとって不思議でならなかった。
②『人生100年時代』に自衛隊社会しか知らないことへの不安
現在の自衛官の定年は、50代半ばから60歳くらい。
再任用制度や定年延長を考慮するともう少しだけ伸びる。
- 『人生100年時代』と言われている中で、 自衛隊退官後に数千万円ほどの退職金を頂いて一生を遂げるまでの何十年という月日を過ごすだけの金銭的余裕はあるのか?
- 50年後の日本の社会保障制度や医療制度はどうなっているでしょうか?
そのようなことを考えていくうちに、
という不安や疑問があった。
人生を遂げるまでの長いスパンで見たとき、自衛官として働き続けていることは、必ずしも安定化にはつながらないのではないか?と思うようにもなった。
- 自衛隊を退職したら、自分は何ができるのか?
- 退職後、民間企業で通じるスキルはあるのか?
- 本当の安定はと『どんな状況になっても自分で稼ぎ続ける力を身につけること。』じゃないのか?
③「お前は仕事を楽しんでいるのか?」
(写真はイメージ:陸上自衛隊公式HPより引用)
PKO(国連平和維持活動)に参加しているときに、外国部隊の同僚に言われた言葉。
司令部での勤務だったので、結構忙しかった。
というか、自分で忙しくしていた。
僕の場合は、通常のPKOの司令部業務に加え、情報収集、本邦への報告業務もあったため、日本で勤務しているときと同じくらいの忙しさだった。
勤務時間は、0730〜2100くらいで、土日も半日くらいは働く。
それとは逆に、色々な国から集まっている組織なので、「お前、何しに来たんだ?」と思うくらい仕事をしない人も沢山いる。
同僚からは、いつも「お前は、何をそんなに忙しそうにしてるんだ?」と不思議がられていた。
僕にとっては、同僚からの「仕事楽しいか?」という言葉は、衝撃的だった。
「えっ??ああ・・・」
(仕事って楽しいものなのか?義務的なものじゃないのか?)
『自分のやりたい事で飯を食っていける人はほんの一握り。多くの人は、嫌な仕事に就いて我慢しながら働いているんだ。』
小さい頃からずっと両親に言われてきた言葉。
だから、『仕事とは苦しいもの。苦しいのを我慢しながらするものなのだ』という観念を持ち続けていた。
- あれをしなければならない。
- これもしなければならない。
- こうでなければならない。
自分の中で勝手に「義務感」を作り出し、どんどん自分自身を追い込み、縛り付け、苦しめていたことに気づいた。
「大吉、もっと肩の力を抜いて、楽しめよ!」
「・・・・・・・・・」
いつからだろう・・
仕事がいつのまにか楽しくなくなったのは。
思い返してみると、
初級幹部時代はもっとリラックスして毎日を楽しんでいた。
隊員と遊びに行ったり、馬鹿なことをやったり。
かなり多忙な時もあったけど、毎日が充実していて本当に楽しかった。
でも、経験を重ねてそれなりに階級が上がってくると、業務量は当然増加し、それに伴ってそれなりの知識も必要となる。
つまり、生活の中で、仕事が占める時間の割合が増加する。忙しくなって当たり前。
そして、結婚をして子供ができると、家族の大黒柱として「夫」として、「父親」としての役割、両親が年老いてくると「今後の実家のこと」や「両親の介護」にも目を向けなければならなくなる。
結婚をして家庭環境が大きく変化し、家庭での自分の役割もどんどん増える中、仕事でも業務量や責任感がどんどん増加した。
僕の未熟さ故、いつの間にか、仕事と家庭のバランスうまく取れなくなってしまい、何をやっても上手くいかなくなってしまっていた。
家庭を優先させると、仕事がうまく行かなくなり、
仕事を優先すると、家庭のほうが疎かになり家庭環境が悪くなった。
妻「もっと、家庭のこともしっかりやってよ!」
僕「うるさい!こっちは仕事してんだから仕方ないだろ!」
妻「ちょっと、あたしの話をちゃんと聞いてるの!」
僕「うるさい!今仕事のことを考えてるんだ!後にしてくれ!」
自分に心の余裕がなくなって、家庭内で喧嘩が増えた。
3歳の子供が気を遣って、喧嘩を止めさせようと自分に気を引かせるような言動を取る。
『あ〜、かなり良くないな。この状況・・・。子供にも、家族にも。』
毎朝0600に家を出て2100頃帰宅する生活。
休みの日でも、頭はいつも仕事のことでいっぱい。
完全に仕事に支配された生活。
今の状態でこれなのに、防衛省本省で勤務し始めたらどうなるんだ?
「月曜日に出勤をして金曜日に家に帰る」という生活が始まったら・・・
【家庭崩壊・・・】
結果は、明らかだった。
そういった将来のことに悩んでいたとき、
陸上自衛隊での勤務の中で、世界各国を回り、各国の軍人を含めた人たちと会って話をする中で、自分を含め家族の『将来』や『働くことへの考え方』が大きく変容していった。
色々な外の世界に触れ、様々な価値観を持った人と出会うことで、人生や仕事に対する価値観が変わった。
『自分の人生の主人公は、自分のはず。』
『俺は、何で仕事や他人によってこんなに自分の人生を振り回され、苦しんでいるんだ?そして、家族を苦しめてしまっているんだ?』
- もっと好きなことを
- もっと自由に
- もっと楽しく
- もっとリラックス
- もっと家族や自分を大切に
一度きりしかない人生。
自分のやりたいことにチャレンジしてみよう!
仕事も含めて、家族と思いっきり楽しもう!
そう思ったとき、
これまで長年僕を縛り付けていた、
両親から言われ続けた『仕事は苦しいものなんだ。我慢して続けるものなんだ。』という固定観念から一気に解放され、「退職」しようと決意できた瞬間だった。
時代の変化とともに、その考え方や価値観は変わる。
『これからは、好きなことを仕事にしていける時代』
現に自分の好きなことをしながら、楽しく生活している人たちが増えている。
防衛省本省勤務経験者が口を揃えて言うような、「自分や家庭を犠牲にしてまで、仕事に尽くすことの美学」にはどうしても賛同はできなかった。
僕には、仕事よりももっと大切なものがある!
そして、毎日楽しめるような仕事を探す!
いざ、崖から飛び降りるとなると・・・
(写真はイメージ:陸上自衛隊公式HPより引用)
そう決意したけど、やっぱり退職することって怖いんですよね。
とても勇気がいるんです。
多くの人にとって人生の中でこれまでにないくらい大きな意思決定で、それはリスクを伴う行動だから。
- 家族を背負っているし、収入が減ってしまって生活が苦しくなるかも
- これまで培ってきたものが失われるかも
- これまでお世話になってきたのに途中で辞めて申し訳ない
どうしても、「失敗してしまったら・・・」というネガティブな思考や、お世話になった組織や人への想いばかりを考えしまうんです。
だから、なかなか飛び出せない。
僕も「退職」を上司に打ち明けるのにかなりの勇気が必要だった。
過去の経験に裏付けされた変な自信と家族の支え
(写真はイメージ:陸上自衛隊公式HPより引用)
僕にとって、とてつもない恐怖に打ち勝ち、
崖から飛び降りることができたのは、
- 『どんな厳しいことにも耐えてきたから、何とかなる。』
- 『自衛官のときよりももっとやり甲斐を感じられて、社会にもっと貢献できる仕事が必ず見つかる。』
- 『僕の経験を買ってくれる企業は必ずいるはずだ。』
という、自信があったから。
陸上自衛隊の中では、幹部自衛官としてそれなりの仕事を任されてやってきたし、リーダーシップやマネジメントを実践し、普通の民間企業ではできないような厳しい経験や貴重な体験をさせていただいてきたという自負があった。
だから、『どこでもやっていける。』という変な自信があった。
そして、退職できたのも、家族の理解や支えがあったから。
退職を承諾してくれない家族もいるだろう。
これまで沢山の苦労を掛けたけど、温かい家族の応援があったから踏み切れた。
家族のためにも、家族を大事にできるような環境を作ろうと決意した。
でもね・・・・
「民間企業で通じる専門スキルがない、35歳以上」の僕にとって、現実はそんなに甘くなかったんです。
僕の退職後の状況
予想してたけど、とても後悔した退職後
退職した当初は、毎日のようにとてつもない虚無感に襲われた。
13年間も陸上自衛隊で生活をしてきて、
- 陸上自衛隊で学んできた戦術、リーダーシップ、戦史等の専門的知識
- 人間関係
- 景気に大きく影響されることのない安定した生活(給与、福利厚生)
- 民間ではありえないような格安でお得な保険
- 特別国家公務員としての地位・・・
これらの自衛官であれば当たり前にあったものがすべて無くなって初めて、『国家公務員って恵まれていたんだな〜』ということを実感した。
そんなこと、退職前に気づけよって感じですよね ^^;
これから家族を養っていかなければならない責任感が重くのしかかる。
正直なところ毎日が不安だった。
与えられた仕事をやっていたら普通に生活ができるという安心感は無くなった。
でも、後には引けない。未来を切り開くしかない。
いくら不安になろうが、もう後戻りはできない状態。
とことん突き進むしかない。
可能性は無限大。
家庭、年齢や金銭的なことで多少の制約を受けるが、良くも悪くも自分の努力や選択次第で人生や家族の運命は大きく変わってくる。
僕の周りにも自衛隊を定年前に退職して、自分で未来を切り開いて活躍している方が沢山いることを思い出した。
大臣、国会議員、知事、国連職員、経営者、医者、弁護士、公認会計士、有名漫画家、芸人・・・
自分の頑張り次第でいくらでも道が拓ける。
実際にそう言う人たちは沢山いる。
「とことんやってやる!」
そう決意した。
まずは、自分の『使命』や『将来の目標』を考え、
そのことをベースとして、家族の『ライフプラン』を作成してみた。
ぼちぼち転職活動をスタート!
自分のマーケットバリュー(市場価値)は?
『自衛隊から離れたら、何ができるか?』
まずは、これから新しいことをスタートする上で、自分の『武器』となるものを分析しなければならなかった。
- どんな経験をしてきたのか?
- どんなスキルを持っているのか?
- どんなことに貢献できるのか?
これが、企業側の求人票とマッチングすれば、内定の確率が大きくなる。
自衛官は、退職後どのような仕事に就いている?
自衛隊では、再就職に向けた教育・訓練も実施される。
①任期制隊員の退職者
(写真はイメージ:陸上自衛隊公式HPより引用)
任期制隊員の退職や陸曹等の定年退官の場合は、駐屯地援護室で再就職のサポートをしてもらえる。
- ライフプラン教育及び今後のライフプランの作成
- 部内・部外の技能教育(パソコン、ヘルパー、フォークリフト等)
- 合同企業説明会への参加(多くの企業が参加するので選択肢は多数)
- 採用試験対策や履歴書の書き方等のサポート
退職後は
- 運輸系(バスやトラックの運転手など)
- 警備系(警備員)
- 製造系(工場での製造)
- サービス系(空港、整備、ホテル、医療、介護)
- 建築(不動産)
- 小売(ディーラー)
といった仕事に就くことが多い。
自衛隊の合同企業説明会など自衛隊の斡旋を受ければ、自衛官を採用したい企業が集まるので、採用される可能性は高くなります。
逆に、自衛隊の援護制度を利用するデメリットを上げれば、
自衛隊の紹介や合同企業説明会だけの中で選択するのは、選択肢の幅を狭めてしまうことです。
もっと自分にあった仕事や自分のやりたい仕事、条件の良い仕事、将来性のある仕事に出会うチャンスを逃してしまう可能性があります。
個人的には、転職サイトに登録して、選択肢を広げた中でベストな選択をすることをおすすめします。
②陸曹定年退官者及び幹部定年退官者
定年退官を迎える予定の人は、定年退職前に「業務管理教育」や「防災危機管理教育(幹部)」「技能訓練」「各種通信教育」といった職業訓練を受けて、再就職への準備をする。
幹部自衛官の定年退職者には、防衛産業の企業に入ったり、都道府県・市町村の防災担当、企業の顧問、保険外交員等として第2の人生を歩む人もいる。
転職サイトへの登録と転職の壁
転職サイトへの登録段階で躓く
転職活動でまず初めにやったことが、転職サイトへの登録。
まずは、世の中にどんな企業があって、どんな職種や業種があるのかを知ることから。
転職サイトに登録を進めていたとき、「????!!!」
これまでの経歴の職種や業種について登録する箇所があった。
職種:
業種:
- 金融・保険
- 建設・不動産
- コンサルティング・士業
- IT・インターネット
- マスコミ・メディア・・・
『・・・・・・・・・・・・・』
これまでの僕の経験を活かせるそうな職種、業種がない!
「人事」は少しだけ経験したことがあるが、中途採用していただいて即戦力として働けるほどの知識や経験を持っていない。
というか、それぞれの業種がどういう仕事内容でどのようなスキルが必要なのか、よくわからない。
あまりにも民間企業のことについて無知過ぎる!!!
「井の中の蛙、大海を知らず!!」
蛙が初めて大海に出たときの感覚かもしれない。
『もしかして、井の中にそのまま残ったが幸せだったのか?』
あまりにも自分の無知さに悲観的になりながら、自分がやってきたことに近い内容を登録した。
「防衛」、「防災」とか「危機管理」って選択肢があればいいんですけどね・・・
『先行きが不安・・・』
『俺って、もしかして民間企業では使えない?』
そんなことを思いながら、7〜8つの転職サイトに登録してみた。
数を打てば、どこかに当たるだろうという浅はかな考えで。
自衛官の転職の『壁』
(写真はイメージ:陸上自衛隊公式HPより引用)
多くの求人票の「必須能力」の欄に記載されている事項。
- ビジネス経験◯年以上
- △△分野での経験◯年以上
- ◇◇資格保有
という大きな制約があった。
- ビジネス経験 → なし!
- △△分野での経験 → なし!
- ◇◇資格 → なし!
『う〜ん・・・・。これが現実か・・』
『これから、資格を取得する?いや、家族もいるし厳しいよな〜』
転職活動を進めていく中で、厳しい現実を突きつけられた。
陸上自衛隊の幹部自衛官としてかなりの教育を受けてきて、誰にもできないような貴重な経験をさせてもらっている。
できれば、これまでの知識や経験を最大限に活かせるような仕事に巡り会えれば、最高なのに・・・
色々な求人票を見ていたが、厳しい現実を目の当たりにして正直行き詰まった。
民間で通じるスキル・経験がなければ転職は難しい
もちろん、仕事は選ばなければ何でもある。
でも、自分の希望する職種、給与等の様々な条件を勘案すると、中々希望するような仕事は見つからない。
でも、折角転職するのだから、できればもっと活躍できて、社会の役に立てて、より良い条件の企業を目指したい!
陸上自衛隊の幹部は、作戦を計画したり、部隊を纏めたりと「ジェネラリスト」として運用される。民間企業でもそうだが、日本の転職市場においては、ジェネラリストとして運用されている人は転職が難しいようだ。専門的スキルがなければ、即戦力とならないためだ。
僕はこれまでの勤務で、長として、人事、情報・保全、教育訓練、兵站管理、教官、国際派遣など様々な領域を経験した。
幹部学校指揮幕僚課程を出ていたので、陸上自衛隊の「職種」から離れて将来的に防衛省の中枢の統合幕僚監部や陸上幕僚監部、方面総監部、師団司令部での幕僚や部隊長等としての役割を期待されていた。
正しく「ジェネラリスト」として勤務をしてきて、これからもそのように勤務をしていく予定だった。
でも・・・民間企業で働くとなると、僕は民間企業の業種で通ずるようなスキルを持っていないことに気づいた。
「ジェネラリスト」だと、経営者とか役員、経営企画等に分類されるかもしれないが、民間企業で働いたことがなく、ビジネスの知識もないのでいきなりそのような役職・部署で勤務するのは難しい。
かといって、これまでの自衛隊での経験を活かせるような業種も中々見つからない。
沢山のオファーやスカウトを頂いたが・・・
転職サイトへの登録後、かなりの数のオファーやスカウトが送られてきた。
不動産や保険の営業や警備関連が多かったかな。
陸上自衛官の転職先にありがちな就職先だった。
『警備関連』といっても、ほとんどの求人が施設警備。
『現場での施設警備か・・。う〜ん・・・。求めているのは、こういうんじゃないんだよな〜。計画作成とかマネジメントの方をやりたいんだよな〜。』
大抵の求人は、給与が防衛省で頂いていた額よりも結構下がる。
独身ならなんとかやっていけるけど、家族を持っているとその給料では厳しい。
これまであまり意識したことはなかったけど、陸上自衛隊時代って、実は結構給料を貰っていたんだなということに気づいた。
そして、どれも初めての経験となるような仕事ばかり・・・
一般的に30代での転職だと、これまでの経験を考慮した即戦力として採用されるようだ。
そういう一般的な認識もあったので、できれば「これまでの経験」を活かしつつ、「マネジメント」を重視するような業務がしたいと思っていた。
それが、自分の能力を一番発揮できて、貢献できる。
『これまでの経験こそが僕の最大のマーケットバリューであり武器』だと思っていた。
『僕の経験やスキルに価値を見出してくれる企業は必ずどこかにあるはずだ。』
そう信じ続けていた。
また、年齢が35歳を超えているので、再就職で1からのスタートというのはできるだけ避けたいという思いもあった。
だから、妥協して就職先を決めたくなかった。
そうだ!転職のプロに話を聞こう!
僕は一般大学卒だったが、公務員一本で試験を受けたので、民間企業の就職活動は全くしなかった。
なので、民間企業のことはほとんどわからない状態だった。
知識がないのに自分の中で悶々としても、先に進めない。
悩んでいても埒が明かないので、
転職エージェントのアドバイザーに直接話しを聞きに行くことにした。
できれば、僕のこれまでの経験を見て、新たな可能性に気づかせていただき、その中で自分の希望する転職先を紹介していただけることを期待して。
実際に、2社の転職エージェントを訪問して2名のアドバイザーと面談をした。
小規模転職エージェントでのアドバイザーとの面談
1社目は、小規模な転職エージェントで対応してくれたのは20代の男性。
とても礼儀正しい人だった。
面接で聞かれるような一般的な質問をされ、希望職種や希望年収等の条件を伝えた。
その男性は20代で経験が浅いこともあり、話を深掘りして、可能性の幅を広げることができなかった。
そして、小規模エージェントだったので求人数も少なく、満足の行くものがなかった。
自分の経歴や転職の動機等を頭の中で整理することができたので、それだけでも成果はあった。対応していただいた担当者には感謝!
この反省から、次は大手の転職エージェントに行こうと決意。
大手転職エージェントでのアドバイザーとの面談
2社目は、求人数がNO1の大手の転職エージェント。
対応してくれたのは、40代くらいの女性。
その女性は、3年前にこの転職エージェントに転職したらしい。
『3年か・・・・。経験が少し浅いな。』と思いながら面談に臨んだ。
転職の流れや転職市場の状況についても詳しく教えていただき、僕との会話の中で「こういう業種はいいかもしれませんね。」と、可能性の幅を広げていただけた。
そして、大手の転職エージェントということもあり、僕の提示した給与面等の条件に比較的近い求人をたくさん紹介してもらった。
さすが、大手!!
話の中で、彼女は以前に自衛官の斡旋をしたことがあるが、紹介したのは陸曹、陸士の隊員だったので、今回の僕のような幹部自衛官の案件は初めてだったらしい。
1時間くらいの時間で、これまでの僕の経歴やスキルについて伝えた。
「僕のこれまでの経験を活かせそうなお仕事はありますか?」
「大吉さんは、これまでかなり過酷な環境で仕事をしてきているので、どんな企業でもやっていけると思います。」
「はぁ、そうですか・・・」
期待していたような答えは返って来なかった。
結局、僕が完全に納得できるような求人は、現在のところ求人数NO1の大手転職エージェントにも無かった。
もし、マッチするような求人が出たら連絡していただくことをお願いして面談は終了した。
『やはり、陸上自衛官の幹部で35歳を過ぎていて、これまでの特殊な経験を業務に活かすとなると、かなり難しいのかな?』
今回の面談を通じて学んだこと。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
①転職は「タイミング」
中途採用は、タイミングが重要らしいんです。
というのも、求人が出るのはそのポストにいた人が何らかの事情で居なくなって、そのポストに空きができたから。
企業としては、そのポストを埋めるためにある一定期間、求人を出し、応募者の中から面接をして採用する。
つまり、自分が行きたい企業やポストがあっても、そのポストが空いていなければ求人は出ないんです。
たまたま転職の時期に自分の希望する求人があればいいんですが、無ければ中々就職先が決まらない、あまり希望はしていないんだけど収入が必要だし仕方なく入社するという事態になることもあります。
自分にピッタリあった良い求人に出会えるかは「運」もあるのです。
②書類選考通過が最大の関門
中途採用の書類選考の通過率は、たったの20%らしい。
実は、面接に進むまでが一番大変らしいので、転職エージェントからは気になった求人はどんどん応募するように勧められた。
そうは言われても、求人票を見てしっくり求人はそれほど多くなかった。
そして、あまりしっくりこない企業に応募して書類選考が通過しても、次の面接のための企業研究や志望動機を考えるのに時間を割くのは、時間の無駄だと思った。
だから、本当に話を聞いてみたい、求人票が魅力的な求人を厳選して、そこに力を集中することにした。
アドバイザーが言っていた『書類選考通過率20%』というのは、一度作った職務経歴書をそのまま使い回して色々な企業に提出しているのが原因ではないかと思った。
企業の求人票と職務経歴書の内容が合致しなければ、書類選考の通過は難しい。
ある日届いた運命のスカウトメール
転職サイトに登録して7ヶ月後、大手転職エージェントで面談を行ってから約1ヶ月後のこと。
登録していた転職サイトから、1件の『スカウトメール』が届いた。
『スカウト』って、レアな求人で使用される制度なんですね。
【求職者の経歴・スキル=企業が欲しい人材】と考えたときに企業・転職エージェントの担当者から送信されてくるんです。
転職エージェントからスカウトメールが送られてきた場合、その求職者が見事採用されれば、企業側から転職エージェント側にその求職者の年収の何十%かを支払うようになっているらしいんです。
企業にとったら、転職エージェントを通じてスカウト制度を利用することが一番「金」がかかり、転職エージェントにとっては、一番「金」が入る制度らしいです。
だから、ポストが沢山あって、巷に溢れている誰でも応募できるような求人であれば、スカウト制度は使用しないんです。
これまで、何件かのスカウトは頂いたが、これまでの業務経験が活かせる企業というよりは、自衛隊で培った体力や精神力を活かしてというようなものばかりだった。
つまり、あまり人気のない求人、人が集まらなさそうな求人でのスカウトが多かった。
しかし、今回のスカウトは違っていた!
【非公開求人】 防衛省キャリア出身者
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
- 求人内容、ドンピシャ!
- 海外出張、駐在あり!
- 年収、結構アップ!
- 福利厚生、充実!
- 会社の立地、最高!
こんなことってあるんですね。
震えました・・・
最初の難関、書類選考
まずは、企業への応募。
書類選考から始まるため、『履歴書』と『職務経歴書』を準備する。
両方ともPC作成用のしっくりくる定形が見つからなかったので、自分で枠から作成。
スカウトがきた求人は、僕の希望にドンピシャの求人。
この企業なら自分の能力を最大限に発揮できるし、入社後も活躍できる理想的な求人。
こんなチャンスはまたとない!絶対に逃したくない求人。
職務経歴書には、これまでの経験を棚卸しして、アピールポイントを山のように記載して送った。
面接まで進めば、大丈夫だという確信があった。
指揮幕僚課程の2次試験の試問の練習や後輩の指導にも当たった経験があり、面接でのポイントや職務の分析は何度も経験してきたためだ。
幸い、陸上自衛隊で様々な経験をさせていただいたので、職務経歴書の記載は十分できた。アピールポイントも含めてA4用紙で7枚も書いた。
ちょっと多すぎるかなと思ったけど、面接まで行けずに書類選考で落とされたら、それはそれでかなりショックを受けてしまうだろうと思った。
100%をアピールして書類選考で落とされたら、企業の求人とマッチングできなかったということで納得はできる。
だから、かなりの時間をかけ、面接の諮問をイメージしながら100%出し切った。
無駄なことは削ぎ落とし、企業側の求人内容に通ずるポイントをできるだけ簡明にして、量が多いので見やすくすることにも心がけた。
結果、書類選考通過。
転職エージェントからは、「企業側の人事担当者は、内定を前向きに考えている。」ということを聞いた。この時点で少し安心した。
30代後半にして人生初!民間企業での面接
民間企業ではじめての1次面接。
どんなことを聞かれるのか不安だったが、一般的に聞かれるであろう退職理由、希望理由、長所・短所はしっかりとしたものを準備していた。
あとは、事前に提出した職務経歴書に沿って質問されるんだろうなと思い、質問を予想してそれに対する回答を準備していた。
更に、企業のHPを見ながら企業理念や価値観、編成表、実績等を研究し、入社した後、求人票に記載されていた業務について、自分だったらこのようにするというイメージを膨らませ、企業側への質問も10個くらい準備して臨んだ。
実際の面接では、人事部長、配属先の長(役員)、担当者の3名が面接官だった。
陸上自衛隊式の面接しか知らない僕にとっては、とても新鮮だった。
終始穏やかで、飲み物まで準備をしていただいていた。
しかし、面接ではかなり細かいところまで突っ込んで聞かれた。
企業側の部署の長と担当者もどうすればいいのか思案している事案について、あなたならどうやって対処するかなど、かなり細かいところまで質問された。
事前に自分なりに業務に対する細かいイメージを作り上げていたので、何とか回答することができ、面接を通じて入社後には即戦力として力になれることを確信した。
1時間30分予定の面接だったが、30分オーバーの2時間の面接となった。
時間がオーバーしたということは、面接としては良い兆候らしい。
1次面接は、他にも防衛省と警察庁のキャリア組(国家1種)の合計3名だったらしいが、何とか1次面接通過の連絡を頂いた。
省庁のキャリア組でもそのキャリアを捨てて、民間企業に転職する人もいるんですね。
最終面接は、一人だけだったので企業の取締役と和やかに話して終わりました。
取締役との面接だったので、どんな鋭い質問をされるかビクビクしていたので、かなりの準備をして臨みましたが、入社への意思確認程度でした。
翌日には、内定通知をいただきました。
こんな感じで僕の初めての転職活動は、無事終わりました。
誤解しないでほしいこと
①自衛隊に残るという選択肢を忘れないで!
(写真はイメージ:陸上自衛隊公式HPより引用)
誤解しないでほしいことですが、上記のことはあくまで僕個人の経験や私見です。
陸上自衛隊では、民間企業では絶対に経験できないこと、やりがいのある仕事も沢山あります。
現状の仕事が苦しい、職場環境が良くないと、どうしても「外の世界」に目を向けてしまいがちになりますが、一度冷静になって考えましょう。
- 転職後の生活は大丈夫か?
- 転職する時期は、いつがベストなのか?
転職をしないで自衛隊に残るという選択肢の方が良いという場合もあります。
転職にはリスクが伴うからです。
転職活動がうまく行けばいいですが、「ご縁」が無ければ、就職先がなかなか決まらず、焦ってしまって自分の希望する条件を妥協してしまうこともあるかもしれません。
その結果、陸上自衛隊にいたほうが良かった後悔することもあると思います。
転職を成功させるためにも、退職をして再就職までのプランを立てたり、貯金をしたり、自衛隊にいる間に転職に必要な資格を取得したり、しっかりと準備をしてリスクを軽減してから退職することをおすすめします。
転職には様々なリスクがあることも理解した上で意思決定をしていただければと思います。
②あなたにとって会社務めへの転職が最良の選択ではないかもしれない
今回は『民間企業への転職活動』について書きましたが、僕がその判断に至るまでに、もう一段階の過程を踏んでいます。
収入を得て生活していくための手段には、様々な方法があるからです。
僕にとって、将来の目標や現状のスキル、家庭状況等の様々な要素を勘案して今の自分や家族にとってベストな選択が「民間企業で正社員として働く」ということだっただけです。
これまで様々な制約があってできなかったこともできるようになったので、次の目標に向かって知識や経験を積んで、将来的には次のステップを踏み出すつもりです。
次の段階に進むために必要な知識や経験を積むことができる場所が、今回転職先として希望した企業だったのです。
まとめ
1 (ハイクラスの)転職は、求人数が多い転職サイトを選ぶべし。
実際に使ってみて良かった3つの転職サイト
① リクルートエージェント(求人数が最多)
② BIZREACH(ハイクラス求人が充実)
③ エン・ミドルの転職
転職|30代、40代のハイクラス転職サイト【ミドルの転職】エンジャパン
2 転職エージェントのアドバイザーに話を聞きに行くべし。
・ アドバイザーは、経験豊富なベテランを要望する。
・ 具体的な希望をイメージをアドバイザーに伝える。
・ アドバイザーと話すことにより職務の棚卸しができ、面接対策にもなる。
・ 希望を伝えることで、それに合った求人を紹介してもらえる。
・ 転職初心者でも転職の流れから詳しく説明してもらえる。
3 無料の面接対策セミナーを受講すべし。
・ リクルートエージェントに登録すれば、無料で面接対策セミナーの受講が可能
・ 「面接不合格=人物的にダメ」 ではない。
・ 中途の面接は、求人票とあなたの職歴やスキルとのマッチング
あなたの自衛隊での経験がどのように企業活動に活かせるのか?
・ 新卒面接は、個人のポテンシャル
4 職務経歴書は妥協せずに、自分をアピールすべし。
・ 履歴書及び職務経歴書は自分のセールスレター
・ 自分の経験を棚卸し、求人票へ適合させる。
訓練での泥臭い話や災害派遣活動での話は格好のネタ
・ 面接でアピールしたいことを、職務経歴書に仕込んでおく。
5 企業研究、入社後の業務のイメージを膨らますべし。
・ 面接対策として、当然やっておくべき事項
・ 企業側への質問も思い浮かべやすいので、面接で積極性や熱意をアピールできる。
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長文を最後まで根気強く読んでいただいてありがとうございます(^^)
当時の思いも含めて一気に書いたので、少しわかりにくい箇所もあるかもしれませんが、あなたの今後の選択に少しでも役立てば幸いです。
今日も皆様にとって良い一日となりますように!
元国防男子 大吉