旦那の仕事が理解できない!! ある陸上自衛隊幹部自衛官の奥様の悲痛の叫び
ご無沙汰しております。
元国防男子の大吉です。
ブログの更新が中々できなくてすいません!
最近全然更新していないにも関わらず、毎日非常に多くの方にこのブログに訪れて頂いてます。多くの方に読んでいただいていることに、非常に感激しております。
いつも見てくださっている方、本当にありがとうございます!
今回は、司令部勤務で非常に多忙な生活を送っている、ある陸上自衛隊幹部自衛官の奥様より苦悩のご相談を受けましたので、それに関連する記事を書きたいと思います。
- 多分、自衛官本人はもっと悩んでる
- 家族を持つ隊員達からのアドバイス
- 僕の妻も同じ悩みをずーっと抱き続けていた
- 喧嘩の耐えない日々
- 僕の反省すべき点
- 一家の大黒柱としての決断
- 自衛官が退職に踏み切れない理由とは
- 人生を劇的に変えるには、とりあえず崖から飛び降りてみるのも手
- 陸上自衛隊で『働き方改革』が進まない理由
- 一生懸命頑張った代償
- プランBを準備しておく
- あなたにとって陸上自衛隊での勤務が最重要?
こんな結婚生活は想像してなかった・・・
「うちの旦那は幹部自衛官。司令部勤務で多忙のため、なかなか家に帰ってこない。」
「『働き方改革』と言われているのに、以前と全然働き方が変わらない。」
「文書の書き方、陸上自衛隊のいわゆる「文書要務」が厳格すぎて、それに時間を取られてしまって、非効率なんじゃないの?」
「いつも家庭で喧嘩ばかりで辛すぎる!」
などなど、旦那様の仕事に対する不満、不信感や、旦那様がうつ病になりかけているという悩みを持たれている奥様でした。
奥様だけでなく、自衛官の旦那様も仕事と家庭のことで大変で悩んでいるんじゃないかなと想像します。
恐らく、同じような悩みを抱えている自衛官の奥様や自衛官は、多数いらっしゃるのではないでしょうか。
『陸上自衛隊、幹部自衛官、妻、悩み』と、Yahoo! 知恵袋なんかで検索すると、同じような悩みがたくさん出てきそうですね。
自衛隊の世界は、民間の方からすれば、何をやっているのかよく分からない、なかなか理解できない独特の世界だと思います。
多分、自衛官本人はもっと悩んでる
一般女性と結婚した自衛官の中には、奥様に仕事の事についてなかなか理解してもらえず、悶々としている人は、多いのではないでしょうか。
もちろん、一般女性全てが自衛官の仕事について理解されてない訳ではないと思いますが・・・
僕の場合、
今の妻と付き合っているときは、「へぇ〜そんな事やってるんだ。凄いね!」から、結婚した途端、「えっ!?何で?おかしくない?」に変わりましたから(^ ^)
なかなか仕事のことについて、理解して貰えないんですね。
- 何で、そんなに朝早く仕事に行ってるのに夜遅く帰ってくるの?
- 一体、一日に何時間働いてるの?
- 勤務時間決まってないの?
- 演習で1ヵ月間も家を空ける?
- 演習で1ヵ月も山の中で生活をするの?
- 1ヵ月もの間、山の中で何をしてるの?
- ご飯はどうしてるの?
- ほんとにずっと1ヵ月物間山の中で過ごしてるの?
- 本当はどこかで遊んでんじゃないの?
疑問だらけ!
一般の方からすれば、旦那が演習のために1ヶ月も家を空けるということに対して、疑問に思いますよね・・・
実は、仕事と家庭の両立に行き詰まった現役の自衛官の方からも、この手の相談をよく受けるんです。
「ブログ見ました。あのブログを書いているのって、◯◯3佐ですよね?実は、僕も今自衛官を続けようか悩んでまして、相談に乗って欲しいんですけど・・・」
このブログを認知してもらって、多くの現役自衛官から相談の依頼を受けるようになりました。そして、多くの現役自衛官がワークライフバランスについて悩んでいることに、やはり以前とあまり変わっていないことを認識しました。
家族を持つ隊員達からのアドバイス
僕は自衛隊に入隊して部隊配属になった時に、部隊の先輩隊員に『彼女・妻への教育』について、アドバイスを貰ったことがありました。
「もし、これから彼女と付き合うことになったら、あるいは結婚することになったら、まずは、彼女・ヨメを教育したほうがいいっすよ。」
「自衛隊の世界は、民間の人からするとなかなか理解できない。自衛官が、仕事で何をやっているのか理解できない。だから、家庭ではしょっちゅう喧嘩になる。」
「まず、妻への教育をしっかりすることだ。特にこれから多忙になる幹部自衛官は。」と。
一人だけでなく、色々な隊員から言われました。
恐らく、多くの隊員が家庭での夫婦関係で同じような悩みを抱えて、苦悩を経験していたものと想像します。
『妻への教育』
確かに必要だと思いますが、ちょっと違うかなと思うところもあります。
「妻への教育」と言うよりは、夫婦間の毎日のコミニケーションが非常に重要になってくるのではないかなと思います。
『大切なコミュニケーションを怠ったこと。』
結婚をした後、僕ができていなかったこと。
反省すべきことです。
僕の妻も同じ悩みをずーっと抱き続けていた
僕の妻も結婚以来、前述の奥様のように、幹部自衛官の旦那の仕事や職場環境に対して、不安や悩みをずーっと抱き続けていました。
「何でいつもそんなに朝早くに出勤して、帰りも遅いの?おかしくない?」
「仕事帰りにいつもどっかで遊んできてるでしょ?こっちは子育てで忙しいのに。」
「あたしは何のためにあなたと結婚したの?あなたの世話をするためだけに結婚したの?こんなんじゃ、結婚した意味がない。」
「子育てで一番辛い時期に、あなたはいつもいないわね。どれだけ私が大変かわかってるの?」
「はぁ?飲み会?私が子育てでこんなに忙しいのに、よくそんな事言えるわね!」
このような言葉を、毎日のように投げかけられました。(^^;)
妻の言葉は、自然な言葉なのかもしれません。
『自衛隊の常識は、世間の非常識』
陸上自衛隊という特殊な環境、社会にいる人たちの行動は、なかなか一般の方には理解しがたいものです。
もちろん、大学を卒業して10年以上陸上自衛隊で勤務をしていた僕にとっては、その環境や社会は、当たり前のものなんですけどね。
だから、妻が言っていることがよくわからなかった。
なぜ、そんなにいつも怒っているのかが理解できなかったんです。
喧嘩の耐えない日々
一生懸命仕事をして家に帰ってきているのに、そのような愚痴ばかりを言われると、黙ってられなかったんです。
家に帰って早々、喧嘩のゴングが鳴る(^^)
「なんで仕事をしっかりしてるのに、そんなことをいつもいつも言われないといけないんだ!
「疲れて帰ってきてんのに、そんな嫌味をいつも言われると余計に疲れるんだよ!」
「じゃあ、俺が仕事を辞めて家事を全部やるから、お前が外で働いて金を稼いでくるか?」
「そんなに今の生活が嫌なら離婚すればいいだろ!」
いつも妻から投げかけられる言葉に対して、イライラが爆発してしまう。
仕事も大変…
家庭も大変…
家庭でも毎日のように喧嘩で、楽しいことがない日々が続いた。
仕事もいっぱいいっぱい・・・
家庭のこともいっぱいいっぱい・・・
心休まる時間が無くて、常にイライラしていた。
ご飯を食べている時も、トイレに入っている時も、お風呂に入っている時も、通勤している時も、仕事の休憩時間も、仕事時間も、本当にいつもいつもイライラしていました。
そしていつの間にか、自分がちょっとのことでイライラをするめちゃくちゃ気の短い人間になっていたことに気づきました。
なかなか仕事に集中できないし、自分の心情は常にイライラしている状態、家族の雰囲気も、ものすごく悪い状態。
どうにかしないと‥この状況…
僕の反省すべき点
職場の環境云々は別として、このような状態になってしまったのは、それだけ自分が未熟で、心に余裕がなかったんだと思います。
妻に自分の仕事について理解させられてなかった。
家庭内でのコミュニケーションが圧倒的に不足していたんです。
まずは、仕事について理解してもらわないといけなかった。
多忙なのは今の組織に勤めている以上は仕方ない。
組織は変わらない。じゃあ、どうするのか?
現状や今の気持ち、将来についての日頃からのコミュニケーションが、当時の僕にとっては必要だったんです。
実を言うと、僕は仕事から帰ってきて疲れていた事もあり、妻とあまり会話をしてきませんでした。
ご飯を食べている時も、頭の中は仕事の事ばかり。
せっかくの家族が集まってご飯でも食べているのに、家族で楽しい話をする事はありませんでした。
こんなんじゃあ、妻が怒るのは当たり前ですよね^^;
もちろん仕事の話は、家ではほとんどしませんでした。
どうせ話したって理解できないし、毎日が単調で話のネタになるような出来事もない。
それよりも、頭の中でいろいろ仕事のことで考え事をしているんだから、むしろ黙ってて欲しかったんです。
仕事で疲れているので、しゃべるのが面倒だったんです。
だから妻の話しかけに対しても、いつも「うるさい!」というような言葉を、イライラしながら投げかけていました。
今思えば、とてもひどい対応だったなと猛省をしています。
特に反省すべきは、子供の前でも夫婦喧嘩をしていたんですね。
とても、悪影響だったと思います。
子供もそのことを察してか、喧嘩してる最中に話しかけてきたり、何か自分のほうに気を引かせるような行動をとるようになりました。
子供に非常に悪影響…
子供に対しては、いつも非常に申し訳ない気持ちになっていました。
かわいそうなことをしてしまったな…
いつもそう思っていましたが、いつの間にか、自分の怒り狂った感情をコントロールすることができなくなっていました。
後から振り返ってみても、あの時の自分自身はとても異常な精神状態だったのかな・・・
あの頃は、目の前の仕事を完遂することに精一杯で、そのことに全く気づかなかったんです。
今になって、心に余裕ができて、やっとそのことに気づくことができました。
かなり遅いですよね。
多くの家族との貴重な時間を無駄にしました。
でも、色々と苦労した分、多くのことを学ぶことができました。
そんな僕に対しても、いつも僕のことを思い、当たり前にご飯を作ってくれたり、弁当を用意してくれたり、僕の仕事の悩みを聞こうとしてくれたり、大変な子育てをやりながら、家族を支えようとしてくれた妻には、非常に感謝をしています。
そして小さいながらも両親が喧嘩しているのを見て気を使い、何とか喧嘩をやめさせようと親の気を引きそういう娘の健気な言動には、非常に感激させられ、そんな小さな子供にそのような思いをさせてしまった自分を情けなく思いました。
一家の大黒柱としての決断
家庭はガタガタ、仕事もなんだか身が入らない。
うーん、最悪…
環境を劇的に変えるしか、現状は変わらないんだろうな・・・
正直僕は焦っていました。
このままだと家庭が崩壊して、自分も精神的につぶれてしまうかもしれない。
時間の問題かも…
このまま階級が上がり、責任が増えてくると、状況が更に悪化してしまうのは火を見るより明らかでした。
僕は市ヶ谷の防衛省陸上幕僚監部へ異動直前に退職を決意しました。
現状のまま、本省勤務をしたらどうなるかを何度も想像してみました。
どうしても、将来に光が見えなかったんです。
自衛官が退職に踏み切れない理由とは
自衛官に限らず、退職をするには非常に勇気が必要です。
人生の中でも、これまでにないくらい大きな決断になるからです。
もしかしたら、これまでの生活がガラッと変わってしまうかもしれない。
人間関係も新たに構築していかなければならない。
新しい仕事がしっかり出来るだろうか。
色々と先のことを考えると不安になってくる。
家族を持っていたら尚更、不安・・・
現状がどんなに辛くても、その現状は『コンフォートゾーン』になってしまっているんですね。
だから、ガラッと環境を変化させるような決断ができないんです。
どうやって、上司に退職の話を切り出そうか・・・
今後の生活はどうなってしまうんだろうか?
退職をして次の仕事はすぐに見つかるんだろうか?
次の仕事は今と同じ位の収入、もしくはそれ以上の収入がもらえるんだろうか?
これまでお世話になってきた人たちを裏切ることになってしまうんじゃないか?
色々な不安ばかりが頭の中をめぐるんです。
これまで陸上自衛隊にはいろいろな経験をさせてもらいました。
僕を育てるために、非常に多くの『投資』をしていただきました。
幹部候補生学校での教育、米国陸軍への留学や陸上自衛隊幹部学校での教育・・
退職することで、お世話になった陸上自衛隊を裏切ることになるんじゃ・・・
不安だけでなく、罪悪感も・・・
そういうことを悶々と考えてると、なかなか転職に踏み切れないんです。
人生を劇的に変えるには、とりあえず崖から飛び降りてみるのも手
でも、この『退職』という、ステップが突破できなければ、次のステップには進めないわけです。つまり、退職をして、苦しい現状よりも家族にとってより良い生活を送られるようなワークライフバランスを達成するための新しい可能性の扉を開けないわけです。
ただし、退職をするにはそれなりの合理的な理由をしっかり準備して、納得してもらう必要があります。
僕も退職を上司に伝えるまで、何日も悶々としていました。
伝えないといけないのに、中々踏ん切りがつかない・・・
そしてある日、意を決して上司のところに行きました。
(退職のためには、いつかは言わないといけないこと。家族のためにもしっかり伝えなければ・・)
「班長。相談があるんですが、ちょっと今お時間よろしいでしょうか?」
上司を別の部屋に案内して、退職の話を切り出しました。
「実は・・・・という状況でして、どうしても退職する必要があります。これまで陸上自衛隊には感謝をしきれないくらいお世話になりましたので、非常に心苦しいのですが、退職をしたくよろしくお願いします。」
それを聞いた上司は非常に驚いていました。
「えっ?お前辞めるの?マジか!!!」
その上司の顔は、今でも忘れることができません。
異動内示もそろそろ出ようかという時期。
内内示は既にもらっていて、陸上自衛隊の中枢である、陸上幕僚監部への異動がほぼ決まっていた。上司は、当然、僕が陸上幕僚監部へ行って勤務するものだと思っていたことでしょう。
「それは、他の方法では何とかならんのか?」
「いいえ。色々と検討しましたが、他の方法でも厳しいんです。家族とも相談して決断したことです。」
様々なやりとりがあり、30分くらい話しただろうか・・・
「そうか・・・お前と家族がそれで納得してるんなら・・・」
何とか直属の上司に理解していただけた。
「ちょっと、これから部長のところへ行って話そう。」
それからその上司と一緒に部長のところに行きました。
部長にも退職を決意した経緯をしっかりと説明し、直属の上司からもしっかり説明していただけたので、すぐに納得していただくことができました。
その後、陸幕人事部、副司令官や司令官とも話をしました。
内定日が迫っていたこともあり、速やかに退職手続きを終える必要があったため、約1週間程度で退職に至ることができました。意外にあっさりと退職手続きは終わりました。内定前で、陸幕人事部には多大なご迷惑をおかけしてしまいましたが・・・
僕の場合は、ほぼ無計画で退職をしました。
あれこれ考えたり、準備をしたりする時間がなかったんです。
まずは何も考えずに崖から飛び降りるというのも1つの手かもしれません。
色々な人の思いやいろいろな考えが頭の中を駆け巡り、なかなか決意することができなかったからです。
もちろん、計画的に準備をしていたほうが、退職後のリスクは減らせますし、そちらのほうが家族にとっても安心なのは言うまでもありません。
陸上自衛隊で『働き方改革』が進まない理由
数年前から『働き方改革』と言われているけど、陸上自衛隊で何が変わったの?
前述した、幹部自衛官の奥様の疑問です。
防衛省内で色々な取り組みはされているようですが、やはり民間企業の取り組みに比べれば歴然の差があります。
あんな巨大な組織は、すぐには変われません。
業務に多少の余裕のある部隊や機関なら出来ると思いますが、それ以外の多忙な部隊や機関は難しいと思います。
これから、その理由を説明します。
陸上自衛隊の仕事上、『働き方改革』は馴染まない
そもそも、陸上自衛隊の仕事上、働き方改革は馴染まないのです。
当たり前のことですが、自衛隊の仕事を民間企業が代替できる訳ではありません。
特殊な仕事なんです。
国に対する脅威が切迫している場合又は大規模災害が発生した場合など、「働き改革」などと悠長な事は言ってられません。国民のため国のために自己を犠牲にして働く必要があります。入隊のときに自衛官はそのように『宣誓』をしますし、国防にはそういう人たちが必要なんです。
やるべきことは盛り沢山。でも深刻な幹部自衛官不足
以前のブログにも書いた通り、昔から陸上自衛隊は幹部自衛官が不足しています。
それにもかかわらず、陸上幕僚監部の改革、陸上総隊の新編、南西諸島の強化、北朝鮮のミサイル発射、中国の脅威、日韓関係悪化、トランプリスク、災害派遣など複数の非常に大きな課題を抱えています。
これらの困難な業務を遂行していく上では、それなりの教育や経験を経た優れた幹部自衛官が必要です。人材育成には、多くにお金と時間がかかります。
幹部の数だけを悪戯に増やそうとすれば、幹部自衛官の平均スペックや仕事の質が下がってしまい、恐らく色々な所で弊害が発生することになるでしょう。
ですから、限られた人間で多忙な仕事をこなしていかなければならないんです。
そもそも「残業」の概念すらない
そして、そもそも自衛隊員には、「残業」の概念がありません。
勤怠時間管理がされてないのです。(最近は、実験的に導入をしている部隊もあるようですが)
ですから、日常の業務では自分で『勤務時間感覚』を持って仕事をしなければ、止め処なく仕事をしてしまいます。そして、周りがまだ仕事をしている、ましてや上司が朝早く来て夜遅くまで仕事をしているのに、自分は上司より遅く出勤して早く退勤することができるでしょうか?
民間の方は奇異に感じるかもしれませんが、陸上自衛隊では、それが中々出来ない雰囲気なのです。
僕もそうでしたが、特に仕事もないのに、上司や周りの同僚に忖度して無駄にダラダラと職場に長く滞在してしまっていました。
司令部等多忙な部署での勤務となると、一応は定められている終業時間に「はい、さようなら」ということにはならないのです。特に、下っ端の幹部は。
上司が「帰れ!」と一言言ってくれれば、全然違うと思うんですけどね。
そこまで気が回る上司は中々いない。
民間企業であれば、「勤務時間」が厳格に決まっていて、それを超える場合は「残業」が発生します。会社としても出来るだけコストを削減したいので、残業はできるだけして欲しくない。上司が仕事をしてても、それは上司の仕事だから、自分の正面の仕事が終われば関係ない。自分の仕事が終われば、すぐに帰る。そういう考えが当たり前。
もし、本気で働き方改革をするのであれば、大きく業務のやり方を変えたり、これまでの思想や伝統を変えたり、根本から変革する必要があると思います。
部隊でも幹部不足。幹部自衛官は休めない!
長期の演習や災害派遣で溜まった代休。
これもなかなか消費するのは難しいんです。
なぜなら、部隊に幹部に数が不足しているので、幹部がいなければ、部隊が回らないんです。訓練ができないんです。
かつて僕は代休が1年で40日以上溜まったことがあります。
中隊長のような管理職になれば、その代休がお金に変えられるのですが、初級幹部だと、代休を期限内に消化できなければ消滅してしまいます。結局、その代休が溜まってもそれを消化するだけの休みを取ることが難しいんですね。
結局は赤線でその代休を消すことになりました。
このような幹部自衛官は多かったのではないでしょうか。
今となってはこのような事は既に改善されてるはずですが、昔はそういうこともありました。
多忙な部隊の初級幹部の給料は、時給に換算すると、陸士隊員よりも貰っている額は少ないんじゃないかと思います。だから、みんな幹部自衛官になりたがらない。割に合わないんです。
幹部自衛官の給料とか福利面にフォーカスをしてしまう人にとっては、幹部自衛官の仕事はすごく辛く思えてきて、嫌になってしまうんです。
僕は、もう少し、幹部自衛官の給料は高くてもいいんじゃないかと思います。
一生懸命頑張った代償
残念ながら、業務の忙しさのため家庭と仕事の両立がなかなかできるできなくなってしまい、うつ病になってしまい家庭が崩壊してしまったり、またうつ病がひどくなって自ら命を立ってしまう。そういう人を僕はたくさん見てきました。
僕の同期や同僚に中にもそういう人はいました。
それって非常に悲しいことだと思いませんか?
国のため一生懸命命を削って、プライベートを犠牲にして働いているにもかかわらず、仕事とプライベートのバランスが崩れてしまったこと、仕事で悩み、病んでしまい、自ら命を絶ってしまう。
せっかく与えられた貴重な人生。
こんなことで終わっていいの?
こんな終わり方でいいのでしょうか?
プランBを準備しておく
確かに、組織としての『働き方改革』の取り組みは重要です。
そのような事にならないように未然に防げるような取り組みを進めていく必要があります。優秀な幹部自衛官がうつ病になったら、それだけで組織にとって大損害です。自殺者が出たらその職場に与える副次的な影響も非常に大きくなります。
でも、組織や他人を変えることは、非常に難しいですよね。
短期間で変わることはないし、変わったとしても微々たるもの。
一番早いのは、自分自身が変わることです。
だから、僕は初めから、はっきり決めていました。
もし業務が行き詰まったり、せっかく築いてきた家族が崩壊しそうになった場合、もうどうしようもなくなったら、その時点で陸上自衛隊を辞める。
これまで家庭が崩壊した人や自殺した人のことを見てきて、そう決めていました。
これは非常に大事な思考法だと思います。
将来のことを予期して、あらかじめ自分がとるべき行動を決めておく。
1つしか選択肢がない事、一つの仕事に依存してしまうこと、その仕事が自分が生きていく上で全てのことだと思い込んでしまうことは、非常に危険なことだと思います。
常にプランBは準備しておくべきです。
あなたにとって陸上自衛隊での勤務が最重要?
自衛隊を退職して思いましたが、はっきり申しますと、世の中には腐るほど仕事がありますし、元自衛官を必要とする企業は必ずあります。
それに、今の日本では、贅沢をしなければ飯が食えないと言う事はありません。
働ける体、働く気力があればコンビニエンスストアでアルバイトしたり、何でもいいんです。仕事は何でもあります。
最悪、病気で働けなくなっても、日本には生活保護というセーフティネットもあります。
稼ぎながら次のことを考えればいいんです。
少しの期間、家族には迷惑がかかるかもしれません。
しかしながら、長い目で見れば、もしあなたに自殺されるよりは家族は幸せなのではないでしょうか。
今のあなたの陸上自衛隊という職業は、あなたが10代、20代の未熟な年齢のときに決断した職業であって、本当にあなたに適した仕事では無いかもしれません。
もしかしたら、世の中にはもっとあなたが活躍できるような仕事、もっとあなたが輝けるような仕事が存在するかもしれません。
僕は思います。
身体を壊してまで、家庭を壊してまで、今の仕事を続けないといけないの?
仕事って自分の健康や命、家庭よりも優先されるものなの?
仕事よりも、あなたのことを好きになって付いてきてくれた人や子供の方が大切なんじゃないの?
一度しかない人生。
自分の好きなことをやればいいんじゃないの?
自分が毎日ワクワクできるようなことができればいい。
自分がもっと輝けるような仕事ができればいい。
毎日楽しく過ごすことができれば、周りにいる人たちも幸せな気分気持ちになるのではないでしょうか。
もし、自殺したいほど苦しい状態であれば、あるいは家庭が崩壊しそうな状態なのであれば、ご家族としっかりコミュニケーションを取った上で、勇気を持って「退職」という選択肢をお勧めします。
昔の記事でも同じようなことを書いた記憶がありますが、これがこのブログで一番伝えたいことなんです。
僕の経験や僕の思いが、今悩んでいる人たちのお役に立てれば幸甚です。
今回も大変拙い文章になってしまいました。
長い文章を最後まで読んでいただきありがとうございました。
今日も皆様にとって素晴らしい1日となりますように!
元国防男子・大吉