元・陸上幹部自衛官の13年間の奮闘記

ダメダメ大学生だった元陸上自衛官の13年間の自衛隊での経験や教訓を共有するブログ

【元新隊員教育の区隊長が語る】 〜陸上自衛隊の新隊員教育もゆとり教育??〜

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陸上自衛隊公式HPより引用)

 

おはようございます。

元・国防男子の大吉です。

 

先日、陸上自衛隊にいたゲイの隊員の話をしたのですが、

その時にお話したM1士。

とにかく、

力が無さ過ぎて小銃の据銃さえできなかった・・・

結局、部隊に配属されたが、部隊の訓練について行けずに

すぐに退職してしまう。

そのため、部隊の方でも忙しい業務の中、そちらの方の対応に追われて、

更に忙しくなってしまう。

部隊としても困ってしまうんです。

 

future-oriented.hatenablog.com

 

今日は、そんな新隊員の陸上自衛隊への入り口の教育である、

一般陸曹候補生の区隊長として勤務したときの経験について話したいと思います。

この記事は、

にはオススメの記事です!

 

 

一般陸曹候補生の前期教育の区隊長を担当

 部隊配属後、臨時勤務で新隊員教育の区隊長へ

幹部候補生学校を卒業後、部隊に配属されて約2年が経過した時、

 

中隊長から一般陸曹候補生の区隊長の話が下りてきた。

 

「おい、大吉3尉。武山駐屯地で一般陸曹候補生の第1期生の区隊長の枠がきてるんだけど、興味あるか? 3ヶ月間の臨時勤務。」

 

「えっ、新隊員教育の区隊長をできるんですか!? 是非、お願いします!」

 

まさか、

憧れの区隊長という役職ができるとは思っていなかったので、即答

本当にラッキーだった。

 

神奈川県横須賀市の武山駐屯地の第117教育大隊

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(出典:Wikipedia

 

僕が参加した教育隊は、神奈川県横須賀市の武山駐屯地にある

第117教育大隊の第339共通教育中隊。

第117教育大隊は、一般曹候補生予備自衛官補の教育

を担当する部隊で、

第339共通教育中隊は、一般曹候補生の教育を担当する。

 

武山駐屯地には、第117教育大隊のほか、

武山駐屯地は海に面しており、気候も温暖。

近傍には三崎や葉山等の風光明媚な場所があり、

教育には最高の環境

 

ただ、問題があるとすれば、

霊感が強い人にはちょっと辛い駐屯地ということ・・・

 

僕は霊感が全く無いので経験をしたことはないのだが、

夜中に寝ているときに誰かに足を掴まれたとか、

兵隊がザッザッと歩く軍靴の音が真夜に聞こえる

とかいう噂をよく聞く。

 

僕の区隊にいた新隊員にも霊感が強い子がいて、

「区隊長、今、外柵のところでタバコを吸っている少年が2人いますよ。」

「えっ、何処に?」

「ほら、あそこですよ!」

僕には全然見えなかったのだが・・・・

 

かつて、宜保愛子(ぎぼあいこ)という霊能力者がいた。

 

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 (出典:http://wishcomestrue.ti-da.net

 

武山駐屯地の近傍にある、霊が出るという廃墟のホテルに取材で行ったらしいが、

そこよりも武山駐屯地のほうがヤバイということを言われていた。

「あそこには、絶対に入れない。」と・・・

 

実は、武山駐屯地に所在する少年工科学校(高等工科学校の前身)で、

50年程前に訓練事故が発生している。

武山駐屯地内にあった訓練用の池で渡河訓練中に生徒が溺れ、

それを助けようとした生徒が次々に溺れてしまった。

結果、合計13名もの生徒が溺れて亡くなっているのだ。

それ以来、

上記のような不可解な出来事頻繁に起こっているらしい・・・

実際、高等工科学校には何度もお祓いに来てもらっているらしいが、

未だに成仏されていないようなのだ・・・

 

教育期間中は、区隊長も新隊員と同じ施設で寝泊まりをするのだが、

僕は一度もそういう経験をしたことがない。

 

霊感がない人にとっては環境がよく過ごしやすい駐屯地かもしれないが、

霊感が強い人にとっては、

毎晩の就寝後が訓練より大変かもしれない。

新隊員の区隊長・助教は、おもしろい!

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陸上自衛隊公式HPより引用)

 もし、幹部自衛官のあなたや陸曹のあなたに新隊員教育の区隊長

助教の臨時勤務の話があれば、是非やって欲しい!

 

殆どの新隊員が、高校や大学を卒業してすぐに入隊した隊員。

中には、2回めの入隊という隊員もいたが、

陸上自衛隊のことを全く知らない隊員ばかり

新隊員の真っ白いキャンバスに自分の色で絵を描ける

だから、その責任はとても大きいのだが、

本当にやり甲斐のある教育であり、新隊員から学ぶことも多い。

 

僕が入隊後の幹部候補生学校でそうだったように、

区隊長や付教官は自衛隊に入隊して初めての、一番関わってくれた教官たち。

教育中の教官の姿や信念などは、

陸上自衛隊人生の中でとても大きな影響を与える

そして、一生忘れることはない

初めての入隊者にとっては、いつまで経っても区隊長であり、助教であり、

憧れの尊敬する存在なのだ。

上級部隊からの馬鹿げたお達し

新隊員教育でもゆとり教育に?

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陸上自衛隊公式HPより引用)

 

区隊長として勤務をしていたとき、上級部隊から

  •  ゆとり教育世代の新隊員に厳しい訓練をさせるとすぐに辞めてしまうから、厳しい訓練をさせるな
  •  とにかく、新隊員の前期教育は楽しんでもらえ。
  •  教育中のハイポートや泥水の中を通過するような戦闘訓練は禁止

このことを聞いたとき、開いた口が塞がらなかった。

  • 陸上自衛隊の教育でもゆとり教育ですか??
  • 国を守る隊員を育成する入り口の教育ですよ!!
  • 中学校や高校の教育ではないんですよ!
  • 国民の税金から給料を頂いているんですよ!

あまりに馬鹿げた上級部隊からの指示に本当に失望してしまった。

教育隊長に見つかり、こっぴどく怒られる

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陸上自衛隊公式HPより引用)

 

当時、3等陸尉で若かった僕は、

その上級部隊の指示をあまりにも馬鹿げていると思い隊舎から離れた訓練場で、

ハイポートをやらせていた。

訓練だから、きつくて当たり前

きつくない訓練は、訓練ではない

 

ん??

ハイポートをやらせている時、前方から教育隊長(第117教育大隊の長)らしい人が歩いてくる・・・

なんか嫌な予感・・・

 

 

嫌な予感的中!!

 

「コラー!何やってんだ!!」

「ハイポートはやるなって言われているだろう!貴様、何でやってるんだー!」

 

その場は、新隊員たちの前でこっぴどく怒られて終わった。

新隊員の前で指導しなくても・・・

でも僕は止めなかった。なぜなら・・・

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陸上自衛隊公式HPより引用)

 

でも、そんなことでめげる僕ではない。

 

ある戦闘訓練課目の当日。

前日に大雨が降ったため、戦闘訓練場は水たまりばかり・・・

 

「上級部隊から指示されたように泥水の中での戦闘訓練を禁止したら、

訓練なんかできないじゃないか。」

 

仕方ない・・・

 

当初の訓練展示の時、

区隊長自らが泥水の中で訓練展示をしてやった。

 

陸上自衛隊の訓練に泥水なんか関係ないんだよ!

こうやってやるんだ。

 

それを見ていた新隊員は、初めは、

「えっ?ここで本当にやるの??」という顔をして

僕の展示を見ていたが、

区隊長が泥水に入ってやっているのに、

自分たちがやらない訳にはいかない

意外にも喜んで、楽しそうに泥水の中で訓練をしてくれた。

そして訓練終了後、大声で隊舎まで区隊全員で揃ってのハイポート

 

迷彩服はドロドロ、戦闘靴の中にも泥水が入り、

訓練後の小銃や装具の手入れは大変だった・・・

でも、これでこそ陸上自衛隊の訓練でしょ!

新隊員達が意外と楽しそうに?泥水に入って訓練している姿をみて、

やってよかったと思った。

 

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陸上自衛隊公式HPより引用)

 

僕は、幹部候補生学校での教育や部隊での訓練で、悪天候での訓練こそ色々な学びがあるし成長するということを学んでいた。

戦場は、心地よい小春日和ばかりではないんです。

 

過去の先人達は、インパールガダルカナル硫黄島等・・・

想像を絶する様な環境下で命を掛けて戦われたんです。

 

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 硫黄島に研修で行ったときに撮影した写真

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きつい訓練だからやり甲斐があって、印象に残り

終わった後の達成感を味わえる。

そして、区隊の団結力も高まる。

きつくない訓練なんてやる意味がないんです。

変な優しさは、隊員のためにならない。 

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陸上自衛隊公式HPより引用)

 

この3ヶ月間は泣くほどきつくても、卒業する時には笑顔で卒業させる。

僕にはこの信念があったから、

新隊員には訓練も体力錬成も勉強も徹底的に全力でやらせた。

新隊員教育最後の筆記の修了試験では模擬問題を作成して、

100点満点を取得できなければ、

完璧にできるまで消灯延期をさせて

何度も同じ問題をやらせた。

勉強が苦手な隊員もいたが、

陸上自衛隊のすべての筆記試験は暗記をすればいいだけ

「妥協をせずにやるかやらないか」で将来が決まってしまう

隊員の職種や任地選択の際には、

成績が良くなければ希望職種や任地等が競合した場合に負けてしまうから。

成績は、悪いより良いほうが絶対的に有利

 

自分の教育が甘かったせいで、

自分が妥協をしてしまったせいで、

新隊員たちのこれからの陸上自衛隊生活の大きな選択

負の影響を及ぼしてしまうことが嫌だったから、

自分も全力でやったし新隊員にも全力でやらせた。

最後に

今までも、上級部隊の指示に反した教育をしたことは正しかったと思っている。

何事も初めが肝心

新隊員教育で陸上自衛隊は楽勝」というイメージを持ったら、

部隊に配属された後の厳しい訓練について行けなくなる。

部隊と新隊員教育との大きなギャップを感じて、

退職する羽目になってしまったM1士のような隊員を

生み出してしまうかもしれない。

そうすれば、部隊の方にも迷惑がかかってしまう。

 

新隊員を辞めさせないために、訓練の厳しさを緩めてしまう・・・

上級部隊としては、新隊員に教育中に辞められてしまうと自分たちの立場、

評価が・・・・というのが本音のところだったと思う。

結局、

変な甘やかしは、隊員のためにも部隊のためにならないのだ。

 

以上が、僕が新隊員の区隊長として勤務をして学んだことでした。

 

最後まで読んでくれてありがとうございます。

今日も皆様にとって良い一日となりますように!

 

元・国防男子 大吉