元・陸上幹部自衛官の13年間の奮闘記

ダメダメ大学生だった元陸上自衛官の13年間の自衛隊での経験や教訓を共有するブログ

幹部候補生学校での生活 〜辛くなったときには、このことを思い出してほしい〜

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陸上自衛隊HPより引用)

 

 

おはようございます。

元・国防男子の大吉です。

 

今日も幹部候補生学校での生活シリーズをお伝えしたいと思います。

 

自衛隊の教育には、「印象教育」が付きもの。

きつい訓練や鮮明に頭に残る言葉を使って、教育効果を高める。そして、学生のに響かせる。

だから、教官の中に「悪者役」が必要なんです!

 

このことさえ知っていれば、あの憎い教官への見方も変わるはずです (#^^#)

 

1つの区隊(候補生約30名)は、区隊長(1等陸尉)、付教官(2等陸尉)、助教(陸曹)の3名によって担当される。

この教育を担当する2名の幹部は、幹部候補生学校でも優秀な成績を収めて卒業した選りすぐりの幹部自衛官。人間的にも優れている。

助教も空挺レンジャー等を経験した体力バリバリの方。幹部候補生学校の教育期間中は、素晴らしい教官陣によって恵まれた環境の中で指導してもらえるのだ。

 

この人達の教えをしっかり守ってさえいれば、1年後にはかなりの成長が見込めるのだ。

 

実は、教官達もきつい。

区隊長は厳しい父親的存在で、付教官は厳しい母親的存在。

 

この教官陣の中で、もっとも身近な存在で、毎日怒りつづけてくれるのが、「付教官」。

候補生たちは、理不尽とも思えるような指導をされ、罵倒され、嫌味を言われ・・・

そして、付教官は、普段、笑顔を見せることはほとんどない・・・

 

候補生の生活面や戦闘戦技課目の殆どを付教官が担当する。

付教官は、23時の消灯頃まで学校にいて、候補生の面倒を見たり、毎日30名の候補生と「剛健日記」という日記のやり取りを通して、候補生の悩みの相談に乗ったり、訓練のアドバイスを与えたりする。

 

でも、候補生から嫌われるのが役目。

 

常に、学生の不十分な点を探し、それに対して怒鳴り、徹底的に反省をさせ、同じ失敗を繰り返さないように印象付ける。

 

候補生達からは、「この人は、人間味がなく、理不尽で本当にな奴だ。」と思われ、学生同士の飲み会では、いつも愚痴の対象・・・・

 

それでも、徹底的に嫌われ役に徹しなければならない。

 

だから、「付教官」って役職はキツイんです。

 

 

そんな付教官がいつも口にしていた言葉。

 

「自分の成長のための近道は、この教官陣3名を好きになることだ。」

 

でも、教育間は、シバかれ、嫌味を言われ続けるので、とても好きになることはできない。

 

そんな、付教官の言葉を聞いて、

候補生たちは、(はっ!?ここまで虐げられて、好きになれるわけないだろ!)と鼻で笑う。

 

でも、教育を受けていくうちに、教育に対する情熱本当の優しさを感じるようになり、1年間の努力に必ず感謝をするようになる。

 

10年以上経った今でも、あの時に指導していただいたことは、鮮明に覚えており、全身全霊で僕たちの成長に貢献してくれたことに感謝している。

 

それほど、「付教官」はインパクトのある存在だ。

 

 

 

区隊長」も、実は結構きつい役職。

 

区隊の全体を監督し、受け持ち区隊の候補生全員を「信頼される小部隊のリーダー」に相応しい識能、資質まで成長させる責任を負っている。

 

区隊をまとめることはもちろん、優秀な付教官の「お手本」ともならなければならないため、言動にはかなり注意をしなければならない。

 

更には、区隊長の階級が1等陸尉なので、「指揮幕僚課程(CGS)」の試験が控えている。

 

この試験は、筆記試験と試問試験に分かれており、合格すれば東京都の目黒にある「幹部学校」に入校する。

卒業後は、大隊長陸上幕僚監部や司令部の幕僚として勤務するため、戦略、戦術、戦史、リーダーシップ等を約1年半かけて勉強する。教育期間中の講演や研修もかなり充実している。昔の陸軍で言う「陸軍大学」に当たる場所で、将軍への登竜門。卒業すれば、将来の職域がグッと広がる。

1等陸尉になれば、全員が強制的に「4回」受験しなければならない試験だ。試験範囲も広く、1次試験は論文試験で、3日間ペンで書きまくる。2次試験の試問試験は、これまで自分のやってきた職務の分析や戦術的な知識をプレゼンしたりする試験。上司の指導が激しすぎて、鬱になってしまう幹部もいるほど。

各学校や部隊等は、自分のところからCGS合格者を出そうと必死なので、優秀な幹部に対しては、必然的に上司からのプレッシャーが強くなる。そう、幹部候補生学校で優秀な成績を収めてきた「区隊長」に対するCGS合格への期待は、非常に大きいのだ。

 

このようなCGS試験合格への周囲の期待も背負いつつ、区隊長本来の職務である、幹部候補生の育成に携わらなければならない。課業中は、候補生の進路を決めたり、訓練計画を作成したり、成績等をつけたりするため、多忙だ。

課業中には、試験勉強はできないので、人知れず夜や早朝に勉強をしているのだ。

 

教官に当時の本音を聞いてみた。

幹部候補生学校を卒業後、都内でかつての教官達と飲む機会があった。

 

そのときに、付教官に聞いてみた。

 

「付教官って怒り続けないといけないから、辛いですよね〜。」

 

 元付教官:「ホントそうなんだよ。俺は、元々そんなに怒る性格ではないんだけど、役者として徹しなきゃならんからな。あの頃は、正直きつかったよ。怒るのって、結構体力がいるんだよな〜。お前たちも経験している通り、部隊に行ったらもっと厳しいしな。」

 

と当時の本音を教えてくれた。

 

幹部候補生学校での師弟関係は、一生もの

将来、一緒の部隊で仕事をする場合もある。その時には、色々なアドバイスをくれて、助けてくれるメンター的存在となるでしょう。

 

幹部候補生学校で築き上げた教官達との関係は、大切にしてください。

 

辛くなったら、思い出してほしい。

 ・ 教官達は、いつも怒鳴ってばかりだけど、あれは演技(もちろん、本気で怒る場合もあるけど・・・)

 ・ 意地悪なことばかりするけど、あなたが部隊に配属された後、あなたに部下の前で恥をかかせないため

 ・ 教官達もこの教育期間は、きつい思いをしている。

 

当時の僕は、未熟でそんなことわからず、教官達に対する愚痴ばかりを言っていた。

でも、教育を受けていくうちに、何のために怒鳴り散らしたり、理不尽とも思えるような反省をさせていたのかが理解でき始めた。

 

それは、すべて、候補生の成長を思ってのことであり、教官達からの熱い愛情だった。

 

このことを知っているだけでも、教官達に対する見方や自分の行動が変わるはずです。

 

 

 

最後まで読んでいただいき、ありがとうございます。

今日も皆様にとって良い一日となりますように。

 

元・国防男子 大吉