元・陸上幹部自衛官の13年間の奮闘記

ダメダメ大学生だった元陸上自衛官の13年間の自衛隊での経験や教訓を共有するブログ

幹部候補生学校での生活 〜同期の異変〜

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陸上自衛隊幹部候補生学校HPより引用)

 

おはようございます。

 

元・国防男子の「大吉」です。

 

今日も幹部候補生学校シリーズで、教育の中盤での「同期の異変」についてお伝えします。

ストレスのかかる環境下で生活していると、出てくる生理的反応は違っても、誰しも起こりうること。

S候補生から多くの事を学びました。

 

真夜中に起こった恐怖の出来事

 

ある日の真夜中、その出来事は起こった。

私を含めた同部屋の同期にとっては、これまでに経験したことのない「恐怖」の出来事だった。

 

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同期のS候補生が、真夜中に「」な事を言っている。

そう、その恐怖というのは、同部屋のS候補生が「夢遊病(夢中遊行症)」になってしまったことだ。

恐らく、幹部候補生学校で精神的に追い詰められた状態が継続していたので、それが症状として出てしまったのかもしれない・・・

 

 

ある日、いつもどおり23時に幹部候補生学校で消灯ラッパが鳴り響いて約3時間後のこと・・・・

 

僕は、同部屋のS候補生の「」で目が覚めた。

15人が一部屋で就寝しているので、僕の他、3名がS候補生の「一人言」に気づいて起きた。

 

 S候補生:「もうそろそろ、起床時間だから皆を起こしたほうがいいよね?」

 

S候補生は、隣のベッドにいるT候補生に話しかける。

 

 T候補生:「S候補生、何言ってんの?まだ、午前2時だよ?」

 S候補生:「えっ、でも、早く起きて準備しないと教官に怒られちゃうよ!」

 

S候補生は、そう言ってベッドからガバっと飛び出て、今度は隣で寝ているO候補生の肩を掴んで、揺すり始めた。

 

O候補生は、唐突の出来事で、何が起きたのかわからないまま。

 

 O候補生:「S候補生、どうしたの?」

 S候補生:「いや、もうすぐ起床時間だから・・・早く起きないと。」

 

まだ、外は真っ暗。訳のわからないことを言っているS候補生に、関西出身のO候補生はイライラしながら、

 
 O候補生:「なにを言ってんの〜?まだ、夜中やから早く寝えや〜」

 

 

それから、15分くらい時間が経っただろうか。

 

S候補生は、他の同期と話をしばらくした後、まだ起床時間ではないことに納得したらしく、再び布団に潜り込んですぐに寝息を立て始めた。

 

S候補生の声で起きた他の候補生も、何がなんだか状況がよくわからないまま、再び就寝した。

 

 

0600

いつもどおり起床ラッパが鳴り響き、ブラインドと窓を開け、外に向かって大声で

おはよー」と叫ぶ。

 

数分で布団をざっと畳み、上半身裸になって全速力で階段を駆け下りて「点呼」の態勢を取る。

整列した人から全員が並び終わるまで「号令調整」といって、部隊を指揮するための「号令」をタオルで上半身を乾布摩擦をしながら叫ぶ。

 

f:id:future_oriented:20180702124622j:plain陸上自衛隊幹部候補生学校HPより引用)

 

まわれー、みぎっ!

じゅうたいみぎへー、すすめっ!

 

その後、点呼報告をして各区隊毎に「間稽古」(まげいこ。朝の零細時間を活用した体力錬成)をした後に、清掃。

これが、幹部候補生学校での起床後の流れ。

 

この清掃時に、S候補生に昨日の出来事について聞いてみた。

 

 僕   :「ねえ、S候補生、昨日の夜、何か起きて何か喋っていたけど、どうしたの?」

 S候補生:「??? 何のこと?

 僕   :「いや、昨日の夜中、2時くらいに起きて喋ってたでしょ?」

 S候補生:「えっ、誰と?誰とも喋ってないと思うけど・・・」

 

どうやら、本人は昨晩の出来事を全く覚えていないらしい。

 

(何で??あんなに他の候補生としっかりと会話をしていたのに・・・こわっ!

 

その日の課業間の休み時間は、同期内でその話で持ち切り。

昨日起こされたメンバーが集まり、S候補生の近くに行って問いただす。

 

 S候補生:「本当?嘘でしょ?みんなで騙そうとしてるんじゃないの?」

      「本当に、全く覚えていないんだけど・・・」

 

の一点張り。

 

そこへ、T候補生が現れ、

 「もしかして、それって夢遊病じゃないの?」

 

僕を始め、ほとんどの同期が夢遊病の症状を持った人には出会ったことがなかったので、気づかなかった。会話もしっかり成り立っていたし・・・・

 

 T候補生: 「夢遊病の人って、無意識の中で起きている間は会話はしっかりできるけど、それを覚えていないんだよね。それから、そういう時には、喋りかけないほうがいいらしいよ。頭痛を引き起こす場合があるんだって。」

 

(そうだったのか!納得。)

(確かに、これまで高校とかで部活で合宿した経験はあるけど、それほど精神的に追い込まれるような事ではなかったし、練習はきつかったけど、友達と一緒に寝泊まりできることが楽しかったからな。こういう組織でストレスのある集団生活をしていれば、そういう人も出てくるよな・・・)

 

その後も、S候補生には夢遊病の症状が何回か出た。

 

 

ある時は、急に起きて、

やばいよ!非常呼集だよ!早く急がないと、遅れてしまう!みんな起きて!」

今度は、同部屋のみんなを起こし始めた。

急いで、就寝時のジャージ姿から迷彩服に着替え始め、ロッカーの上に置いてある背嚢(はいのう。陸上自衛隊で使用するリュックサック)を取り出して、徐ろに装備品を入れ始めた。

 

 

また、ある時には、朝起きたら自分のベッドから結構離れた他の同期のベッドの下で寝ていた時もあった。

 

でも、よくよく思い返してみると、その症状が現れる時には、ある「規則性」があることに気づいた。

 

それは、次の日に何か重要なイベントがあるときや、候補生隊当直や区隊当直に上番(じょうばん)する時に、高確率で夢遊病の症状が現れるのだ。

 

例えば、毎朝の朝礼で一人ずつ実施する5分間スピーチで、次の日が自分の番のとき。

訓練で自分が班長等のリーダー的役職に当たっているとき。など

 

S候補生にとっては、人前で何かをするということは、かなりのストレスで、常にプレッシャーを抱えてたのかもしれない。それが、症状となって現れてしまったのだ。

 

 

精神的に辛くなったときにやるべきこと。

 

幹部候補生学校を卒業して12年ちょっとが経つけど、S候補生は元気で勤務をしているようだ。

大学院卒で、体力がそれほどあったわけではないS候補生にとっては、教育期間中は、肉体的にも精神的にも本当に苦痛だったのかもしれない。

肉体的・精神的な苦痛に耐えきれず、辞めていった同期もいた中で、約1年間の教育をしっかりとやり遂げた

やり遂げたことが「自信」に繋がり、小隊長として部隊へ赴任でき、陸上自衛官を継続できているのかもしれない。。

 

何か、きついことをやるときには、途中で辞めたくなるもの。

でも、そこを我慢して最後まで続ければ、大きな成果・成長が必ず得られる。

逆に、途中で辞めてしまえば、それは後悔となり、自信も失ってしまう。

 

幹部候補生学校の生活で、苦しくなった時に以下のことを思い出してください。

苦しいときには、

 ・ 同期に頼ること

 ・ 同期に相談すること

そして、自分ができることについては、

 ・ 同期を助けてあげること

 

自分だけで解決できることは限られている。

同期との切磋琢磨があってこそ、個々人が成長し、深い絆が生まれ、集団としての大きな力が発揮される。

 

苦しい時に、いつも助けてくれるのは、「同期」「仲間」。

 

苦しいときには、

変なプライドは捨てて、助けを求めて下さい。

 

それを助けた同期にとっても、その経験はプラスとなります。

みんなで成長して行くのです。

 

 辛 → 幸

 

」い時に、もう少し頑張ってみてください。

やり遂げたら、そこには「」せが待っていますから。

 

でも、本当に「無理」だと思った場合には、無理をせずに、病院に行くなり、カウンセリングを受けるなり必要な対応をしてくださいね! 

 

 

最後まで読んでくれてありがとうございます。

今日も皆さんにとって良い一日となりますように。

 

元・国防男子 大吉