元・陸上幹部自衛官の13年間の奮闘記

ダメダメ大学生だった元陸上自衛官の13年間の自衛隊での経験や教訓を共有するブログ

陸上自衛隊幹部候補生学校での生活 〜実弾の手榴弾投擲訓練〜

f:id:future_oriented:20180731085416j:plain

おはようございます。

元・国防男子の大吉です。

 

今日も幹部候補生学校シリーズで、「手榴弾投擲」についてお伝えします。

幹部候補生学校では「手榴弾投擲」という課目があり、

実際に演習場の手榴弾投擲場に行って実弾の手榴弾を投擲するんです。 

 

ちなみに、陸上自衛隊の手榴弾投擲要領はこんな感じです。

YouTubeで面白い動画を発見しました。

↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓


元自衛隊員が手榴弾の投げ方を紹介

 

 

陸上自衛隊での手榴弾投擲訓練

 実弾の手榴弾を使用する基本教育は、幹部候補生学校での教育のみ

新隊員教育では模擬弾投擲だけで

実弾訓練はやりません。

 

ちなみに、僕が幹部候補生学校で使用した手榴弾は、パイナップル式のもの。

 

↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

f:id:future_oriented:20180731073633j:plain

(出典:wikipedia:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/20/MkII_07.JPG

 

幹部候補生学校で使用する手榴弾は、安全ピンを抜いて、

投擲して(安全レバーが外れて)から◯秒で爆発する。

爆発をしたら、側面の鉄の部分が破裂し、

その破片で敵を殺傷するものだ。

 

幹部は部隊に配属された後、実際に隊員に教育をしたり、

榴弾投擲の訓練を計画しなければならないため、

実際に実弾の手榴弾を投擲してその威力や特性を確認する。

 

職種によっては、手榴弾を投擲するのは最初で最後の経験となるだろう。

(恐らく、手榴弾投擲をやるのは普通科職種くらい。)

 

榴弾投擲を行う際に重要となるのが、以前の体力検定Ⅱの科目であった

ソフトボール投げ」

(現在、体力検定の科目にソフトボール投げの種目は無くなってしまった。)

球技をあまりしたことのない人にとってはソフトボール投げが苦手な人が多く、

体力検定ではいつも「不合格」だった候補生が沢山いた。

ボール投げが苦手な人たちにとっては、実弾の手榴弾投擲は危険!!

 

榴弾投擲も実弾を使用する前に、投擲所での規則、

投擲の要領や模擬弾を使用した投擲を何度も練習するのだが・・・

ボール投げもそうだけど、

小さい頃から野球等のボールを投げる球技をしていなければ、

飛距離は短期間では伸びるものではない

投擲のフォームや体の使い方から矯正していかなければならないのだ。

だから、何度練習しても目標へ向かって

上手に投擲できない人もいる。

 

過去に幹部候補生学校で発生した悲しい事故

過去に幹部候補生学校では、榴弾投擲訓練で悲しい事故

が発生している。

 

実際の手榴弾投擲訓練の際には、それぞれの候補生の投擲位置に教官達が

付き添っている。

つまり、1人の候補生に対して、教官が1名ずつ付く。

事故防止のため、教官が候補生の投擲場での動作投擲要領

安全管理上しっかりと確認しているのだ。

 

その教官と投擲をする候補生のいる場所は壕になっており、

投擲をする方向には腰の高さくらいの土の壁がある。

投擲する際にはその壁を超えて投げられれば、

自分の所に鉄の破片が飛んできて負傷することはないのだが・・・

 

しかし、過去には候補生が手を滑らせて

榴弾を足元に落としてしまったことがあった。

 

緊張のためか、手榴弾がうまく前に飛ばず、

自分と教官のいる壕の中に転げ落ちてしまったのだ。

 

  • 安全レバーが外れて、◯秒後に爆発する・・・
  • 拾いあげて前方に投げても時間がない・・・
  • このままでは、爆発して候補生もろとも死んでしまう・・・

 

 ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

 

そう思った教官は候補生を守るため、足元に落ちた手榴弾の上に

咄嗟に覆いかぶさって候補生を守った

その教官は、残念ながらその訓練事故で亡くなってしまったのだ。

昭和33年5月に起こった悲しい事故。

 

過去に実際に発生したこの事故について、

榴弾投擲の訓練をする前に教官から聞かされ、

本当に危険な訓練をやっているということを再認識させられた。

 

当時の僕たちにとってすごく衝撃的な話だったし、

自分の命を犠牲にして自分の候補生を守った

勇気ある教官ものすごく尊敬した。

 

あなたは、部下を守るために自分の命を犠牲にすることはできるだろうか?

 

榴弾投擲訓練当日

榴弾の破片効果を実感

前述したとおり、幹部候補生学校で使用する手榴弾は、

爆発時の榴弾の破片効果によって敵を殺傷するもの。

 

投擲場では、鉄の破片が飛び散るため大変危険

よって、投擲をしないすべての候補生は、投擲場から200mくらい離隔し、土嚢を何重にも積み重ねて作られた退避壕で待機する。

その退避壕には、分厚いガラスの監視窓が設置されており、

そこから投擲の状況を監視できるのだ。

 その分厚いガラスの部分には手榴弾の破片が当たったのか、

少しヒビが入っていて、破片の殺傷力の強さを物語っていた。

退避壕に入って待機していても、「ヒューン、ヒューン」

鉄の破片が空気を切る音がよく聞こえた。

200mくらい離れていても、飛んでくるのは鉄の破片

当たったら大怪我をする。  

 歴史は繰り返す?? 

榴弾投擲をする際、

次に投擲する組は、これから投擲する組のすぐ後方の退避壕で待機をする。

よって、前の組が投擲する様子を見ることができる。

 

前の組が投擲している時に、大変なことが起こりそうになった。

 

隣の区隊のK候補生

運動系は基本的に苦手らしい

もちろん、体力検定でのソフトボール投げもボールが前に飛ばない。

投げたボールは、斜め前方向へ飛んでいくタイプ

 

そんなK候補生の手榴弾投擲本番。

 

投擲に不安があるのか、いつになく緊張していたようだ。

 

投擲位置に着いた後、教官の号令が響く。

「投擲準備」

 

「ピン抜け!」

 

「投げ!」

 

あっーーーーーー!!!゚(✽ ゚д゚ ✽)

 

 

何と!!

K候補生は手を滑らせて

榴弾を自分の足元に落としてしまったのだ。

 

過去の手榴弾投擲事故のことが思い出される・・・

 

また、同じ悲しい事故が起こってしまうのだろうか・・・

 

K候補生に付いていた教官が、

慌てて足元に落ちた手榴弾を拾い上げ前方に投げた

 

 

ドーン!

 

 

間一髪・・・

助かった・・・ ゚ε-(´∀`*)ホッ

 

あと1秒遅かったら、2名とも亡くなっていたかもしれない。

壕の中には「手榴弾口」といって、手榴弾を投げ損じてしまった場合に、

できるだけ被害を軽減するための工夫はされているが・・・

所詮、穴を少し掘った程度のもの。

その手榴弾口に手榴弾を投げ入れても、

大怪我は免れなかっただろう。

 

その場にいた教官は、当然大激怒  ゚ヽ(`Д´#)ノ ムキー!!

候補生諸共亡くなっていた可能性もあった。

 

「何やってんだー!殺す気か!!」

 

もし、教官が手榴弾を拾い上げるのを遅れてしまっていたら・・・・

 

ゾッとした・・・

そして自分の投擲の番がやってきた

そんな危険な出来事が目の前で起こった後、ついに自分が投擲する番。

 

まずは、榴弾を受領して、手榴弾点検

外観にヒビが入っていないか等を確認する。

訓練では事故を防止するため、

榴弾の保持要領もしっかりと統制されている。

 

初めて手にした本物の手榴弾

昔、野球もバスケもやっていたので、投擲は問題ない

 

でも、本物の手榴弾

訓練で使用した模擬手榴弾より、重く感じる

 

緊張する・・・・

 

練習で投げたものとは違って、

本当に爆発して破片が飛び散る・・・

過去には死んだ人もいる。

大丈夫だろうか・・・

変な風に爆発をしないだろうか・・・

同期は、ちゃんと投げてくれるだろうか・・・

もし、何かの間違いが起こって、

ピンを抜いた瞬間爆発したら・・・

 

不安ばかりが頭を過る

 

冷静にならなければ・・・・

落ち着け、俺。

大丈夫だ。

 

教官の号令で10名が一斉に投げる。

 

「目標確認!」

 

「投擲準備!」 

 

「ピン抜け!」

 

「投げ!」

 

一斉に目標をめがけて投擲する。

 

数秒後・・・・

 

ボーン! ボーン! ボーン! ボーン!・・・・・

 

次々に榴弾が爆発していく。

 

すべての手榴弾が爆発したのが確認できたら、終了。

 

ふー、何事もなく無事に終わった。

よかった・・・゚ε-(´∀`*)ホッ

 

これを考えると、不発弾処理をやっている隊員たちは凄いですよね!

尊敬します!

 

最後に

f:id:future_oriented:20180731082523j:plain

陸上自衛隊第6師団公式HPより引用)

 

幹部候補生学校では、

この他にも「LAM(ラム)」と呼ばれる

110mm個人携帯対戦車弾の実弾射撃も実施する。

この実弾射撃も、部隊では普通科隊員くらいしか訓練しない。

普通科隊員以外は、幹部候補生学校での射撃が最初で最後となるのだ。

 

幹部候補生学校では危険な訓練もするが、

部隊で幹部自衛官として隊員に教育したり、

訓練計画を作成するためのもの。

こういう教育を受けられるのは、幹部候補生の特権です!

 

これから、幹部候補生学校へ入校する人は楽しみにしておいてくださいね! 

 

 

最後まで読んでくれてありがとうございます。

今日も皆様にとって良い一日となりますように!

 

元・国防男子 大吉